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コール音で目が覚めた。一瞬、自分がどこに居て、今がいつなのか、わからなくなる。
ここはおじさんの旅館で、今は八月八日で、俺は國立真緒。魔王だ。
欠伸をしながら電話に出た。俺も頭のてっぺんから足の爪先までばかで考えなしという訳ではない。ケータイは収納空間からとりだし枕許へ置いていた。
電話の主はおじさんだ。「真緒、よこうちょるところわりいな。荷物が来た」
「あー、わかった。とりに行くよ。どこ?」
「会議室じゃ」
「わかった。ありがとう」
通話を切る。欠伸をして、ケータイを収納し、体を起こした。隣の布団に居る筈の妹が居ない。
一瞬パニックになったが、居間に行くと妹が座って、TVを見ていた。ローテーブルも座椅子も戻し忘れていたので、俺は慌ててそれらを出す。「ごめん」
「ううん」
妹はTV画面を見ている。「お兄ちゃん、魔物と話したんやろ」
「ああ」
妹の手をひいて立たせ、座椅子に座らせた。TVでは、上空から撮っているらしい玉花荘の映像が流れている。謎の巨大怪鳥出現、みたいなテロップがあった。近所のペットショップや動物園からなにか逃げ出したのではないかと騒動になっている。
妹はケータイを操作し、画面をこちらへ見せてきた。
「なっちゃん達。オカ研で、こっちに来たいって。崖崩れやから無理って云っておいた」
「ああ、ありがとう」
「あと、TVでやってる程大きくないよって」
妹の声には張りがない。俺は妹のせなかを軽く叩く。
「大丈夫やから」
「……ほんとに?」
「ああ」
「あんなのが居る世界、危ないやろ」
「大丈夫。俺は、魔物に対して強くなるっていうスキル、持ってる」
妹は心配げだ。俺はその目を見る。「それに、さっきのホートリット、ちゃんと使役できてる。なんかあったら戦ってもらうよ」
その言葉は、妹をかなり安心させたみたいだ。妹はエクシザの凶暴な姿を見ている。それが俺の味方になるなら大丈夫だと判断したらしい。
お部屋を出た。妹はもうしばらく、TVで情報収集するそうだ。ホートリットのことで、チャタラ達の目撃情報がにわかに現実味を帯びてきている。どこかの動物園から集団脱走でもあったのでは? というひと達が出てきたらしい。
それに、実は最近世界各地で似たような「奇妙な生物」の目撃が相次いでいる、というニュースを、このあとやるそうだ。どこだかで、俺が話したレツシュバによく似た死骸が見つかったと、騒動になっているらしい。状態異常が高じると死んでしまうというのは、事実みたいだな。




