3471
ショックだったが、起こったことはもうどうしようもない。忘れよう。それにやっぱりホートリットのたいあたりで崩れるみちは問題だと思うんだ。
頭を振った。それよりも訊かないといけないことがある。
「エクシザ、君は封印されたの?」
エクシザはぶっと鼻息を荒くした。激しく頷いている。
エクシザは人里離れたところで、小動物や小さな魔物などを食べて過ごしていて、人間に興味はない。人間を食べるつもりも、襲うつもりもなかった。
のだが、誰かが縄張りに這入りこんだ。羽を持った大きな生きものだ。それで、どんなやつが自分の縄張りを侵犯したのかをたしかめ、場合によっては殺すつもりで赴くと、羽持ちの人間だった。
その人間から魔力がほとばしったと思ったら、こちらの世界で状態異常に苦しんでいた。
つまり、羽持ちの人間に封印されたのだ。
エクシザも、「封印」のことは知っている。魔物は悪しき魂や、それでないと就けない職業、それに封印について、知っていることが多いようだ。
封印はおそろしいもので、それをつかわれると生きながらにして絶大な苦しみを味わうことになる。その状態からもとに戻れるかどうかはわからない。それが、エクシザの「封印」に対する認識だ。別の世界に云々というのは知らなかったようで、人間の様子が違うのも、自分が暮らしているのとは別の地域くらいにしか思っていなかった。
世界が違うと云っても、エクシザはたいして驚かない。自分にとって快適かそうでないかくらいの違いしか感じていないらしいので、世界が違おうが同じだろうが、特に関係ないのだろう。使役下にあり、ご飯をもらえて、状態異常を軽減してもらえるから、別にほかの世界でもいいや、みたいな。
エクシザがお肉を食べ終えた。俺は二頭を外へ出し、隠れているように云う。「猟友会……ええっと、長距離の攻撃手段を持った、強い人間達が、エクシザをさがしてる。だから、隠れてて」
ぐっと返事があった。エクシザの目に好戦的な色があったので、釘を刺しておく。「攻撃しないように」
エクシザは鼻を鳴らす。
心配なので、ヤラとマルジャンにエクシザの監視を頼んだ。ヤラはいやそうだ。でも、承知してくれる。
「苦しませることもできるんだよ」
余裕綽々のエクシザが、その言葉で羽毛を逆立てた。それからしゅんとしぼみ、不承不承頷いた。チャタラは外見可愛くないけど、おとなしくて可愛いと気付く。
二頭は木立に這入りこんで消えた。俺は窓を閉め、息を吐く。ほんとに、ちょっと寝よう。




