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「そういう態度とると、殺すよ」
淡々と告げる。ヤラがびくっとはねた。
エクシザはついっと顔を背ける。治療もしてもらったし、状態異常も弱くなっている。だからお前なんかこわくないよ、という感じだ。こいつ、自分の立場を理解してないな。
俺は溜め息を吐いて、魔法のコントロールがうまくいくことを祈った。「偸利」
エクシザは目を瞠った。俺はむすっと口を尖らせている。こういうことは、好きじゃない。
ぎゅうう、と、エクシザが唸って身をよじる。俺はそれを睨む。
「今のは、だいぶ加減したからね。次はしないよ。意味はわかる?」
ぐっぐっ、と、エクシザはおそれるような目で俺を見ながら鳴いた。それが人間にとって、肯定を示す動作だとわかっているのだろう、必死に頷いている。
俺はもう一度、溜め息を吐いた。偸利はつかいなれた魔法だったから、加減もうまくいった。
こいつ、最初っから素直にちゃんと答えろよな。俺だってこういう脅しみたいな真似はあんまりしたくないのだ。ごく一般的な日本人の感性をしているのである。拷問とか脅迫とかは、いやなものだろう。
エクシザは憐れっぽくきゅうきゅうと鳴いて、頭を垂れた。もう逆らいません、といったところか。だから、平和的な話し合いができる段階でやっとけばよかったのに。
エクシザは、あちらの世界のどこかにある、山間部に縄張りを持っていた。かなりひなびたところで、人間はめったにやってこないし、エクシザも人間に興味はないので、人里へはあまり赴こうとしない。
人間は、食べるところが少なくて味もいまいちなのだそうだ。ほかのホートリットはなんでも食べるが、自分はそうではない、と、エクシザは強調した。
「つまり、こっちに来ても人間は食べてない?」
エクシザは頷いたが、どことなく悔しそうに見えた。くちばしを打ち合わせて、かちかち云わせている。
五分くらいかけてききだす。弱っていてとにかくなんでもいいから食べたかったエクシザは、人間を襲おうとしたのはした。でも、状態異常で体は重いし、頭もまともに働かず、狩りはすべて失敗に終わった。ついでに、怪我で数日間動けなかったらしい。
その怪我の原因はどうも、大型トラックのようだ。飛ぶのにはエネルギーを消費するので、エクシザは歩けるところは歩いていたみたいで、ある時道路を歩いた。で、大型トラックにはねられ、森のなかへまっさかさま。しばらくそこで、小動物や虫を食べてしのいでいたそう。
高速道路に這入りこんだっぽいな。トラックの運転手さんは、幻覚かなにかと思ってどこにも通報しなかったのだろう。




