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「真緒」

 妹と手をつないで、上まで戻ると、おじさんが待ちかまえていた。坂道をあがっていく途中、ぽつぽつと落ち始めた雨の雫が、大粒になってどんどん降り注いでいる。あのホートリット、羽繕いもまともにできていないみたいだったけれど、大丈夫かな。

 おじさんは険しい表情で、顔色が悪い。なにか云いたげだったが、俺と妹の顔を見てそれをのみこんだらしい。「とにかく、なかに這入れ。話はあとじゃ」

「ありがとう」

 おじさんは頭を振り、俺の腕を掴んでひっぱってくれた。


 柵は俺が破壊したままだ。変なちぎれかたをした紐を見て、みんなどう思ったんだろう。

 柵を越え、従業員が持ってきた大きな傘をおじさんがうけとって、俺達にさしかけてくれた。雨合羽を着た女の子達が、大柄な従業員におんぶされて、どこかへ運ばれていく。あの子達、ここの旅館に悪い印象を持ってしまっただろうな。PR動画、どうなるのかな。

 使役している魔物達から、状態異常をもらった。眩暈と吐き気がする。これがいきすぎると、あの強烈な頭痛と腹痛も追加されるのか。

 ヤラとマルジャンを使役しはじめてからそんなに時間は経っていない。それくらいの差で、あそこまで症状(とでもいうのかな。状態異常の強度)がひどくなるのなら、やっぱりこちらの世界はあちらの世界の生きものには適した環境ではないということだ。自分の体調がどんどん悪くなっていくのに、あいつは恐怖していただろうか。

 ロビーに這入る。おじさんは、たたんだ傘を従業員へ渡し、いいわけみたいにもごもごと云う。「実は……前から渓谷までおりてみたいち……お客さんに云われとってな。そういうふうにしようか、っちゅう話に、なっちょって……」

 ああ、それであの子達をあんなところまで立ち入らせたのか。もし、これからも許可を特別にとらないとだめな場所なら、安易に這入らせないと思う。これからお客さんをいれるかどうかの指標として、動画の再生数やコメントを参考にするつもりだったってことかな。

 おじさんはしょんぼりしている。おじさんには予測できなかったことだ。彼女たちは行儀よく、ヘルメットやスニーカーで、支配人にちゃんと案内してもらって下までおりていった。おじさん達は、ホートリットが居るなんて考えてもいなかった。今回のことは、誰の所為でもない。

 もしかしたら俺の所為かもしれない。魔力の高い人間を狙ってやってきた、ということは、充分に考えられるのだから。


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こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
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