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「わたしは「占い師」だけだったからなったけど、兄が「魔導戦士」か「戦士」かで悩んでたのよ。結局、体力と魔力に少しだけ上方修正がかかる魔導戦士にしたわ。魔力がもう少し伸びると考えて。でも等級が上がっても駄目だったの。体力特化の戦士にしとけばよかったって、ことあるごとに愚痴ってる」
等級……レベルか。
等級のことも話してくれた。
シアナンさんは、最後にお参りした時16、バドさんは12だった。
魔物と戦うと数字が大きくなる。大きくなると、それまでつかえなかった魔法をつかえるようになったり、新しい特殊能力を得たりする。
「昔、自分の適職に納得いかなかった「万能」もちが居てね」
「有名な話よ。等級をあげたら適職が増えるかもしれないと考えたの、その万能さんはね。でも駄目だったわ。相当歳をとってから「奇術師」になったそうよ」
転職不可。そもそも「魔王」しか適職がない。
あらためて、積んでる。
思わずため息を吐いた。
ら、心配させてしまったらしく、お菓子が出てきた。クッキーだ。ありがとうございますと云ってぱりぱり食べた。
「そういえば」
クッキーを見詰める。「はちみつ、貴重なんですよね」
「ああ、それはお砂糖だから。蜂蜜ほど高くはないわ」
でも、いいんだろうか、こんなにばくばく食べて。
……そうだ。ドラッグストアで蜂蜜買ったじゃん。
慥か、壜詰めだったし、この世界でも違和感ないよな? ああ、ラベル貼ってあったっけ。
ちょっと、と断って外へ出た。
空には星が多い。痩せた月もあった。こそこそと庭木のかげへはいりこむ。
収納空間へ手を突っ込む。リュックの口を開け、蜂蜜の壜を取り出した。……うん。ラベル貼ってある。これ剥がせば多分いける。
爪でがりがりやってみた。歯が立たない。三割引きのシールは、剥がれるけど分解した。
むむ。くえん酸つけておいたらとれるが、くえん酸がない
「あ」
……ろくでもないことを思い付いた。崩潰は、触った任意のものを壊せるんだな?
てことは、このラベルだけ壊せる。筈。
ちらっとおもやを振り返る。ばれないばれない。大丈夫。今朝のことだってばれてないし、魔法をつかったことが解ったからって、水を出して口をゆすいだくらいにした認識されないだろう。
問題は巧くいくかどうかだけど、やってみなきゃわからない。
左手で壜の底を持ち、右手でラベルへ触れた。ラベルだけ、壜は壊さないよう、表面だけ、……。「崩潰」
さーっ、と、粉状になったラベルが風に舞った。やった!
その調子でラベルを壊した。壜の表面が少々……くもりがらすみたいな感じに傷ついてしまったが、ま、まあ許容範囲だ。ちょっと形が歪になってしまったような気がしないでもない……いやいやそんなことない。
もと・ラベルを払い除け、意気揚々と屋内へ戻った。




