表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3598/6868

3458


 少なくとも、もう俺に襲いかかったり、敵対したりするつもりはない、みたいだ。

 そういう動きがない。気配もない。睨みには凄まじいものがあるが、どこか怯えも見てとれる。かといって、逃げるようなそぶりもない。

 こいつが逃げようとしたら、それは仕方がない。殺すつもりだ。

 俺は善人ではない。弱っていて、おそらく人間を捕食していないだろうからこいつにほんの少しの情けをかけてやる気分になっただけで、さしのべた手を振り払われてもなお優しくする義理も根性もない。

 俺は死ぬか使役されるか選べと云った。使役がいやなら殺すということだ。

 こいつには俺の思考がなんとなくわかっているらしい。もしくは単に、野生の魔物として、逃げられる確実な保証もなしに敵にせなかを見せたらまずいと察しているのだろうか。悪しき魂を感じとって、怯えているのかもしれない。

 だが逃げようとはしていない。

 使役、でいいのだろう。多分な。

 姿勢を正した。ホートリットはぎくっと体を震わせる。「じゃあ。使役」

 ささやくと、ホートリットは頭を垂れた。ぐぐっと、苦しそうに呻いている。毛がまばらになった頭へ右手をのせて、下方向へ強めに押した。耳らしいところへ口を寄せる。

「勝手に生きものを襲ったり、殺したりしないように。人間を殺したら、お前を殺すからね。わかったら、人間に見付からないようなところで、おとなしくしていなさい」

 低声(こごえ)で命じると、ホートリットは勢いよく後退り、さっと藪のなかへ消えた。一刻もはやく俺から離れたいとでもいうような、俊敏な動きだ。きらわれたものである。


 ただこれで、少なくとも人間を襲うことはない、と思う。使役は駆使魔法と違い、かなり拘束力が強い。

 状態異常をひきとった。頭を殴られたみたいな、それに消化器が溶けているみたいな、強烈な痛みがあって、俺は顔をしかめる。成程、これが絶え間なく続いていたら、ひとでも動物でも見境なく襲うだろうな。

 なにか食べて、魔力を補えば、よくなる。そういうふうに考えるかもしれない。ヤラも、とにかく魔力を補おうと本能で動いていたみたいだったし。チャタラとホートリットという違いはあるが、魔物は魔物だ。似通っている部分は絶対にある。

 状態異常無効はすみやかに効力を発揮し、しかしホートリットの状態異常はなかなかの大物だったようで、痛みはいつになくゆっくりとひいていった。俺は息を整え、うっすら残った眩暈を振り払うみたいに、体の向きをかえる。女の子のひとりが、糸が切れたように倒れる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ