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がらすに両手をついて、じっと下を見ている。ここをつくった建築家と、改装を繰り返すおじさんは、独特のセンスをしているらしい。こんな高いところから下を見て、なにが楽しいのかわからない。
俺なら普通泣き喚く高さだが、不思議とそんなふうにはならなかった。ほーじくんのことで頭がいっぱいだからだろう。みんなはほーじくんを助けようとしていないのだろうか? それとも、ユラちゃんがティーアファンダード卿に堂々と意見した時のように、結局は軽くあしらわれてしまっているのだろうか。もしくは、なんらかの理由で、ほーじくんがみんなの助けを拒んでいるのか。
ほーじくんを助けようとしてできていないのか、そもそも助けようともしていないのか、わからない。
あの子達は友達を見捨てるような子達じゃない。
それを疑っている。俺ははずべき人間だ。自分の根性が浅ましくていやになる。あの子達がほーじくんを見捨てることはありえない。友達なんだ。リッターくんだって、俺が魔法はつかえないと云っていたのが嘘だとわかっても、庇ってくれたじゃないか。
ほーじくんはきっと大丈夫だ。なんにも心配することなんてない。
俺が居なくたって、彼はきちんと生きている。
そう結論づけたところで、眼下でなにかが動いているのに気付いた。動物だろうが、下までかなり距離がある筈なのに、見える。なんだろうと思いながら、マルジャン達の状態異常を奪う。吐き気も眩暈も一瞬だ。
下に居るいきものは、随分、大きい。猪だろうか。夏の緑のなかで、そいつはベージュというかオークルというか、暖色系の色をしており、目立った。見覚えのある色だ。なんだかいやな気分になってくる色。
そいつが羽をひろげた。大きくて、立派な羽を。
血液がさあっと心臓へ吸い取られていくような心地がした。
俺の眼下、渓谷で羽をわさわさしているのは、ホートリットだった。
玄関から飛び出る。渓谷へ近寄れるのはどこからだろう。とにかくあいつと人間を接触させてはいけない。あいつは地面を這いつくばるものならなんでも食べる。それが虫でも馬でも人間でも、あいつにとっては大差ない。
そして、もしあいつもこちらの環境に適応できず、状態異常になっているのなら、あんなふうに昼日中からのそのそ歩きまわっていてもおかしくはない。
状態異常はつらく、放っておけば死に至る。それは魔物であれば、というか状態異常になっていれば、わかることなのだ。きっと。
状態異常で死にそうなら、なにをする?
とにかく魔力と体力を少しでも補う為に、食事をするだろう。




