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「おいしいな」

「ああ」

「おはようございます」

 隣のテーブルから声をかけられて、そちらを見ると、シカタ夫妻が席に着くところだった。

 俺達はぺこっと頭を下げ、微笑んだ。「おはようございます」

「おはようございます。なに食べるんですか?」

 俺の無遠慮な質問に、シカタ夫妻はころころ笑った。きもちのいいひと達だ。

 ウェイターさんがやってきて、シカタ夫妻が注文する。トーストとベーコンエッグ、シーザーサラダ、あとはなんでもいいからスープとくだもの、という発注だった。ベーコンエッグ、あとで追加注文しようかな。

 俺はおかゆを、小さめのれんげで口へ運ぶ。

「今日もまだ、通れそうにないですね、表」

「みたいですねえ」

 ミチヒロさんがちょっと疲れた様子で云った。このふたりは、そもそもここに泊まる予定ですらなく、まきこまれたのだ。ここに来ることすら不慮のことだったのである。

 もし、次に行く場所でのホテルの手配などをすでにすませていたとしたら、そのキャンセルなどが大変な手間に違いない。直前じゃ、キャンセルしてもキャンセル料をとられるだろうし、損失は大きい。今後の旅の予定に響く。

 そういうのがなく、到着直前に予約をとるなり、予約などせずホテルへとびこむなりしていたとしても、予定にないここへの長期滞在は、不本意なことだろう。

 季節というものがあるのだ。今のうちに行っておきたかったところだって、あるだろうし、予定がずれ込めばどんどん季節もかわる。季節が違うと、見えるものも食べものもかわってしまう……。

 あっちではどれくらい時間が経っているのかな。もしかしたらもう、新学期がはじまっているかもしれない。みんな、それぞれの専攻科にすすんで、勉強しているかも。お勉強は大変だろう。それでも、たまにはみんなで集まって、はげましあっているだろうか。

 みんなで仲好くしているだろうか?


 シーザーサラダのいい香りがした。シカタ夫妻の席に朝食が運ばれる。俺達はシカタ夫妻と、他愛ない会話をしている。温泉はせっけんが泡立たないとか、家電がすぐにだめになるとか、そういう話だ。夫妻は温泉のない土地に生まれたそうで、家電がすぐにだめになることは知らなかったらしい。

「さびが来るんですよ」

「へえ」

「冷蔵庫でも何年かしたら買い換えるって、なあ」

「うん」

「なかがさびるから、どうしようもないんです」

 シカタ夫妻はふんふん頷いて、楽しげに見えた。俺達もにっこりする。気分は少し上向いていた。他愛のない、なんでもない会話が、精神の安定にはいいようだ。


感想ありがとうございます。はげみになります。

マオ メランコリィ発動中ですね(;´∀`)


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こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
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