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 妹は俺の左腕をゆすぶるような仕種をした。子どもっぽい動きだ。俺は妹の顔を見ない。膝の上にひろげた、日記もどきを見ているふりをしている。

「封印をつかえるひとは、少ないから」

 低めた声は自分でもぞっとする程、生気がない。「やってるとしたら、ほーじくんも関わってるな」

「お兄ちゃんごめん」

 小さく頭を振る。妹は俺のシャツの袖を、きつく掴んでいる。

 ほんの何日かだけど、俺達はここに期せずしてとじこめられている。不意打ちみたいなその出来事が、精神状態に悪影響を及ぼしていない、とは云えない。気が塞ぐ感じがするのは、そうだ。

 妹も不安なのだと思う。多分、俺よりも。俺は、ほんとにやばくなったら、ほんとにどうしようもなくなったら、魔法がある。でも妹にはそんなものない。

 顔を上げ、妹を見た。にこっと笑う。

「大丈夫だよ。ほーじくん、強いし、凄いからさ。やる気がないとか不真面目とか、云われてたけど、本気になったら強い魔物でも倒せるんだ。やすでだって倒してたから」

 あの、後ろ姿、初めて見たほーじくんの姿が、脳裏によみがえった。あの時も彼は、よれよれの服で、ぼさぼさの頭で、やすでを倒した。多分あれは、ほーじくんがやったことだ。

「だから、強いやつが来ても、ほーじくん負けないよ。お兄さん達も強いし、それにもしかしたら、(ぎょう)なら、ミューくんも一緒かもしれない。ミューくんの治療はほんとに凄いんだ。なんだって、治してしまうんだから。ああ、ミューくんが居たら、ジーナちゃんだって一緒だよ。だったらなんにも心配いらない。彼女凄く強くてね……」

 でもジーナちゃんは、繊細で傷付きやすい。戦いにずっと身を置けるひとではない。

 ミューくんは戦えない。治療をする時は誰よりも勇敢だけれど、戦う意思はうすく、だからそういう子が積極的に戦えるとは思えない。

 ほーじくんだって、幾ら恩寵魔法があっても、強すぎる敵にはかなわない。

 だからこその封印なのに。

 妹は泣くような顔で、無理に微笑んだ。そうやなと云っている。俺は頷く。テーブルの上では、かじりかけのサンドウィッチが、着々と乾燥している。


 レストランへ行った。鶏白湯のおかゆに松の実とゴジベリーを散らしたものと、焼きかぶの温サラダ、とろける洋梨、あたたかくて甘い豆乳、という朝食をつくってもらい、ふたり席で妹と向かい合って食べる。

 どちらもそんなに言葉はない。俺は封印のあれやこれやで心臓がひきさかれそうな感じがしているし、妹は俺にUMAのことを報せたのを後悔しているらしい。


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こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
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