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あっちから来た魔物……。
言葉が頭にしみこむまで、数十秒かかった。その間、妹は辛抱強く待ってくれる。
「でも」
声が掠れる。「悪魔って……どんな外見?」
まぬけな質問をしてしまった。妹も、俺がそういう反応をするとは思わなかったみたいで、きょとんとする。
それから、妹は俺の手からケータイをとりもどし、猛烈な勢いで操作する。「こういうの」
次に見せられたケータイ画面には、様々な画像が表示されていた。どうやら、「悪魔」で画像検索したらしい。
いろんな画像があった。白黒の古そうな絵もあれば、カラフルでどぎついものもあるし、大きなお面をかぶったひと達の行列の画像もあった。これってどこかのお祭りだろう。その下には、般若の面の画像もある。これも悪魔にいれます?
という訳で、ヨーロッパの悪魔のイメージというのは多岐にわたる、というのは理解できた。だからって話に進歩はない、と思ったのだが、妹はケータイをひっこめてから、低声で云う。
「なんかようわからんものなら、悪魔って思うんじゃない?」
「ああ……」
「おらんやった? 人間にちょっと近い見た目で、こわいやつ」
俺はそんなに頻繁にまちの外へ出ていた訳じゃない。それに、魔物にもくわしくない。一応、魔王や悪しき魂に関する本を読みあさっていて、だから魔物に関する記述も目にしてはいるが、人間に似ているものねえ。居たかなあ。
レツシュバだっけ、幻覚を見せるっていうやつ。あれは、毛がなくて羽が生えた猿っぽい魔物、って聴いた。幻覚がどんなものかは知らないけれど、こわがらせるようなタイプだったら、いきあったひとが悪魔の幻覚を見たかもしれない。
そんなようなことを説明してから、でも俺は頭を振った。
「でもそれって、その……封印されたって前提だろ?」
「それが可能性高いと思う」
俺は首をひねった。
「やけど、封印やってのは、無理があるんやないかな」
「どうして?」
「レツシュバは迷惑なやつやけど、封印する程やねえと思う」
ライティエさんが、竜を倒したことがあると云っていた。彼女がつかっている盾は、その時に還元で手にいれたものらしい。竜というのは相当強い、そして厄介なものだと、実際に目にしたことはないが俺は知っている。
それと比べたら、レツシュバは弱い筈だ。幻覚を見せるのは困るけど、状態異常軽減の人間にはあんまりきかないだろうし。
一介の傭兵であるライティエさんが竜を倒せるのだから、レツシュバ程度に封印をつかうこともないと思うだが。




