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鑑定士さんがせなかを叩いてくれて、妹はぱっと手巾をとりだし、俺の口許へあてた。俺は激しく咳込む。かつおぶしが気管に!
しばらく咳をすると落ち着いた。鑑定士さんと妹にお礼を云う。
「ありがとう……ありがとうございます。すみません」
「お兄ちゃん、驚きすぎ」
妹があきれ顔になっている。いやいやいやいや驚くわそんなもん。だからタペストリーは高くても貝貨で十数枚なの。大体さっきオークションのサイトに表示されてたタペストリーは、マイファレット嬢のお母さんが働いてる布地工場で、叩き売られてたやつ。タペストリーのなかでも安い部類。この辺はお手頃価格だぞってすすめられた覚えがあるもん。
ていうか妹よ、ドルならドルと云ってくれ。兄ちゃん死ぬとこだったぞ。
苦手なのだが、従業員が不安顔で持ってきてくれたので、煎茶をあおる。うう苦い。苦いし咽が痛くなる気がして苦手なんだ。
でも、それで咽はすっきりした。大きく息を吐く。妹はケータイを操作し、画面を見せてくる。
「じゅうたんは、安ものと高価なのが混在してたって。高価なのはオークションに出してるって。ほら」
またむせるかと思った。じゅうたんにも目の玉が飛び出そうな値段がついている。10万ドル? これって貝貨2枚で買ったやつだぜ。
じゅうたんとかタペストリーは、国内よりも海外の需要が高い、らしい。その辺はおじさんが、じゅうたんやタペストリーを査定してくれた(し、ついでに見込みがありそうなものはオークションに出して、売り上げの何%かをもらう予定の)会社のひとから聴いたことで、妹の言葉はだからまたぎきだ。
でもまあ、そういうのの会社のひとが云うのだから、そうなんだろう。しらん。
で、その需要を見込んで、海外のひと達がアクセスするであろうオークションサイトに出品した。もっといいものは、もっとお金持ちが集まるオークションへ、直に持っていくらしい。
「こういうとこが切れてないし、長さも揃ってるし、状態もいいし、ウールも凄くいいやつなんやって」
「にゃあ……」
なんともいいがたいので変な声が出てしまった。違うの、違うんです、方言なんです、にーとかにゃんとか云っちゃうんです。
なので妹も俺の言葉はスルーした。
「安ものでも、一枚10万円くらいはするらしいわ。そっちは別で販売するち」
はー。あれかな。多分だけど、安いのはロアウール。高いのはディファーズウール。うわあ、そんなに差があるんだ。信じがたい。




