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お握りうまい。高菜も持っていこうかな。あっちで見なかった気がする。そうだ、高菜の種と梅の木を持っていこう。梅漬けと高菜漬けがなかったらつらい。プラムの塩漬けもまずくはないけど、梅漬けとは根本的に味が違う。プラムやいくりの塩漬けは、酸味が足りないんだよね。香りもフルーティすぎて、それに皮部分にかなり苦みがある。あれをとりのぞくのが大変なのだ。
プラムとかいくりはそのまま食べるか、ジャムがおいしい。梅漬けにするのはやっぱり梅の実じゃないと。
梅漬けは梅の実とお塩とはかり、それに容器があれば、素人にだってつくれる。完熟の梅をつかった、やわらかい梅漬け、すっぱくて最高なんだよな。
俺は誰がなんと云おうと、塩分濃度は18%にする。それは譲らない。ていうか、だいぶ譲歩して18%だ。ほんとは20%でもいい。
しそをいれたものもつくるけど、いれない白梅が好きだ。考えてるだけでおなかがすいてくる。食欲のない時だって、梅漬けを口に含んだらおなかがすいてくるものである。
高菜漬けも、高菜の葉とお塩、あとは唐辛子くらいだ、材料は。それに、はかりと容器があれば、できる。
だから、高菜と梅を栽培できれば問題ない。どこか、田舎のほうにいい土地がないかな。
お漬けものには材料と道具だけでなく、時間も必要だ。梅漬けをおいしく食べられるようになるまで、一定の場所で過ごすことができるか、も、問題だな。
こんな時だけ、収納空間の時間が停まっているらしいのが憎い。お漬けものだけ時間がすすんだりしないかなあ。そんなうまい話はないかあ。
とりあえず当座に食べる分として、ここの旅館自慢のすっぱい梅干しを、幾らか分けてもらおう。レストランで注文すれば出てくるから、それをこっそり収納すればはやいかもしれない。
鑑定さんの部下のひと達が、ごちそうさまをして立ち上がった。廊下へ出て行く。手を洗うのだろう。俺と妹は、残ったお握りを見詰める。高菜がよっつ、オムライスがやっつ、かしわ飯がふたつ、かつおぶしがいつつ、チャーハンもいつつ、柴漬けをまぜこんだのがよっつ、カレーチャーハンがふたつ、特大の餃子を具にしてあるのもふたつ、明太子といくらの魚卵コンビがみっつ、ささぎめしがひとつ。
「じゃんけんぽん!」
「あーまけた!」
「よし!」
協議するまでもなく行われたじゃんけんによって、俺の勝ちが決定した。鑑定士さんにどれもひとつずつは残さないといけないので、ふたつしか残っていないものはひとつ俺がもらえる。あとは妹と分ける。平和的な解決法である。
いや、後々恨まれるかなあ……白石くんに、もうちょっとお握り追加してって頼んどこ。




