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 おじさんの機嫌は悪いままで、お前達は飯をくうてこい、と追い出されてしまった。俺と妹はすごすご、会議室をはなれ、レストランへ行って、朝食をとる。食後に妹がきちんと錠剤を()んだのを確認して、レストランを出た。この調子だと、もしかしたら今日も、荷物は届かないかもしれない。裏道はそれなりに危険みたいだから、そちらを通ってまで配達してくれるかどうか。

「ああ」

 ロビーには、お医者さんが立っていた。看護師さんひとりと一緒だ。

 俺は軽く会釈する。「どうも」

「ああ、大丈夫ですか? 熱はぶり返したり、していないかな」

 やわらかいが、大きめの声だった。妹はぺこっと頭を下げる。


 お医者さんは、ロビーで転んだお客さんの治療を終えたところだったらしい。丁度いいとのことなので、フロントの奥で妹はもう一度診てもらった。もう心配はないらしい。ほっとする。

 とはいえ、原因が多分、チャタラにつけられた傷だろうから、完全に安心はできない。こちらの世界の生きものじゃないからな。一応、傷薬や恢復(かいふく)魔法で、なんとなく治ったように見えているけれど、()()()治ったかどうかははっきりしないのだ。

 お医者さん達にお礼を云って、俺達はロビーへ戻った。今日はここから動けないみたいだし、どうしようか。

 ふいと、目にはいったのは、レストランだ。「なあ」

「うん。なん?」

「キッチン付きのお部屋って、なかったっけ?」


 時間があるけど物理的にできることが少ない。そういう時にやることは決まっている。俺には時間のすすみが凄くゆっくりな、もしくは停止した、収納空間があるのだ。普通、時間をおいたら腐るようなものでも、腐らずに持ち運べる。

 という訳で、妹に頼んでお部屋をかえてもらった。まったく幸運なことに、この旅館には小さなキッチン付きのお部屋が幾つもあるし、そのうちの幾つかはお客さんが泊まっていないし予約もはいっていない、もしくは崖崩れでキャンセルが出ていた。

 もともと、長期にわたる湯治をするお客さんを想定してつくられた宿である。泊まりの費用は抑えて、レストランでお金を落としてもらうようになっているのは、逆を云えばレストランを利用しなければこの規模の旅館にしてはリーズナブル、ということだ。実際、近在の農家さんから食糧を買って自炊している、長期滞在のお客さんも、少なくない。

 俺は妹と一緒に、移ったお部屋のキッチンに立っていた。きちんと手を洗う。これから、お料理して、できあがったものをどんどん収納するのだ。


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