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命を救ってもらったから、それに報いる。そういうことみたいだ。単に、俺がそもそもこちらの世界の人間だから、こちらの世界の環境が毒ではないってだけなんだけど……あ、それに状態異常無効もあるしね。
俺の手柄、というか、俺の努力で二頭の信頼を勝ち得た、ということではないが、二頭に使役状態を続けてほしいという意思があるのはわかった。
「あのさ、ほんとにこきつかうよ」
頷きが返ってくる。俺はくいっと肩をすくめる。「じゃあ、それでいいんだね。ほんとに、使役したままで居るからね」
念を押した。マルジャンもヤラも頷いて、満足そうにしながら目を合わせている。心苦しい部分があるのだが、二頭がそうしたいのなら、それでいいか。
二頭の体を洗った。こちらの世界の虫や、菌、ウイルスなどにたかられているかもしれないし、それが二頭にとって重大な健康被害をもたらすものかもしれない。だからとりあえず、表面だけでも綺麗にしてあげたい。
せっけんで泡だらけにして、豚毛のブラシでこすった。状態異常をもらい、魔力を分け、ヤラの魔法でマルジャンを治療する。ヤラ自身の治療もさせた。怪我をしているような様子だった訳ではないが、念の為だ。用心してしすぎることはないし、万全な状態であろうと努力するのはありだろう。まあ、ふたりにとってはこっちの環境が毒みたいだから、万全になることはありえないけれど、だとしても。
しっかりゆすいで、タオルで拭いた。顔が可愛くないのは相変わらずだ。本当の猿ならもっと可愛いのに、なんていうかなあ。猿とくもの、悪いとこだけ集めたみたいな顔してる。
二頭の体を乾かし、居間へ移らせた。妹は居ないし、窓はきっちり、雨戸まで閉めている。出入り口にも錠をかけていた。だから心配ない。
二頭は小動物(おもに、ねずみとか、その辺の虫とか)を食べてしのいでいるようで、おなかがすいているらしい。なので、あちら産のお肉を食べさせた。「あ、お肉、大丈夫だよね?」
頷かれた。
「お肉、好き?」
頭を振っている。そう、好物という訳でもないらしい。
ちょっと頑張って訊いてみると、雑食性だということがわかった。なかでも、でんぷん質のものが好きらしい。だから、お芋とか、穀物とか。
その辺は猿に近いのな、と思いながら、お肉の横にお芋を並べた。二頭は喜んでいるらしく、体がひょこひょこ上下する。
二頭はおいしそうに、お肉とお芋を食べた。黒砂糖も与えておく。あちらへ戻ったら、この子達に相当頼ることになりそうだ。




