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「やから、配送、バイクでにきりかえるって。でも荷物の積み直しとかあるし、すぐにはできんから、明日のお昼以降になるらしいわ」
「ああ、わかった」
「翌日配達って約束やったから、その分のお金は返すって……」
もう一度地図に目を落とす。崖崩れを起こしたみちから東方向にあるみちを、指で叩いた。おおまわりにはなるが、駅からこの旅館まで通じているし、道幅は充分あるように見える。「こっちのみちはつかえんの?」
「そっちは車でとおりきるひとが少ないんよ。おじさんは運転できるみたいやけど」
妹の指が地図の上をジグザグに動いた。「こんなふうになってるやん? ここの角度が急やから、車が落ちた事故が何回かあったみたい」
それはこわい。
ただ、農家さんが歩くみちとしては立派に機能しているらしい。実際、畑や田んぼへの通勤ルートとして使用しているひとは居る。車は事故が相次いだので、誰も車で通ろうとはしない。歩きやバイクで利用しているのだ。
バイクやリヤカーなどにお野菜を積んで運ぶのなら、そちらのみちでも大丈夫なようだ。なので、食材の心配もない。そう聴いたら凄くほっとした。
妹とふたりでレストランへ這入ると、おじさんと鑑定士さんが四人席でご飯を食べていた。「おじさん」
「おう、真緒」
おじさんが片手をあげる。鑑定士さんは、ベーグルをつかったベーコンレタスサンドウィッチと、フルーツサラダ、半熟のゆでたまごというおしゃれなメニューを楽しんでいた。おじさんはカツ丼と、キャベツとコーンのお味噌汁。しかもカツ丼二杯目。お米がひと粒も残っていないからのどんぶりがある。
俺がおじさんの、妹が鑑定士さんの隣に座った。鑑定士さんはにこにこしている。ウェイターさんが来て、俺と妹はそれぞれ食べたいものを注文した。俺は鮎の塩焼き定食、妹は親子丼。
ご飯はすぐに運ばれてきた。食べながら、おじさんの話を聴く。宝石類は、なんだかよくわからない桁の金額になったみたいだ。よくわからんし計算は嫌いなのでだいぶ聴き流している。とりあえず、ほしいものを好きなだけ買えるくらいにはなったらしい、というのは理解した。
いやさあ。金額が大きすぎて、脳みそがバグってるみたいな感じなんだよね。なんだろうなあ、これ。でもとにかく、おじさんがいろいろ手配してくれるし、俺の要望は大体かないそうだということだった。だからそれだけわかれば充分だろう。
鑑定士さんはにこにこしていて、いい話をありがとうとおじさんにお礼を云っていた。おじさんはにこにこしている。




