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「お兄ちゃんおそーい」
「すまん」
倉庫は、ぱっと見た感じ倉庫に見えない、旅館の雰囲気にマッチしたおしゃれな和風建築だ。観音開きの扉の前、積み上がった段ボール箱を背景に、妹がぶんむくれている。俺に置いてけぼりをくらったのに随分腹をたてているらしい。
俺が苦笑いでワッフルの包みをさしだすと、その表情が一気に華やいだ。俺達兄妹、食欲に極振りしてる。
妹は俺が出した椅子に腰掛け、あったかいワッフルにかじりついている。脚をぶらぶらさせているのが、子どもっぽくて可愛い。はいているのはあちら製のサンダルだ。俺と違って器用な妹は、革紐を複雑にあんで綺麗に結んでいる。
俺は妹の様子ををたまに確認しながら(熱がぶり返したりしないとも限らないから、心配なのだ)、倉庫に積み上がった段ボール箱を収納していた。中身ははちみつのはいった、がらす壜や、プラスチック容器だ。とりあえず重い、割れる危険性のあるものから収納してしまおうと考えている。気を張る作業は気力が充分なうちにやるのが安全だろう。
倉庫はそんなにひろいものではない。天井も高くはなかったから、積み上がっているの段ボール箱も、そこまで多くはなかった。表の段ボール箱はすでに収納してある。そっちもはちみつだった。
収納空間の口を下のほうに開けて、そこめがけて下ろすだけだから、簡単といえ簡単だ。脚立ののぼりおりは面倒だし、腰と膝に負担がある姿勢が多いけど。それにしても、こっちの世界が収納空間不可領域じゃなくてよかった。
腰を伸ばし、息を吐いた。思い出して云う。
「そうや、うまいおそば屋さん見付けたで」
「ほんと?」
「ああ。あとで場所教えちゃる」
「お兄ちゃん大好き」
妹の点を稼ぐのは簡単である。おいしい食べものの話をしたり、あげたりしたらいい。うー、なんか心配になってきた。
はちみつの箱はほとんど収納できた。妹はワッフルを食べ終えて、どこかへ行ってしまう。と思ったら戻ってきて、ケータイを軽く振る。
「昨日注文したやつ、届いてる」
「まじで」
「まじで。水佳がうけとっておくね」
「頼む」
「お部屋に運んでもらうから」
「ありがとう」
妹はこっくり頷いて、出て行った。俺にない甲斐性というものが妹にはあるのだ。
収納空間からとりだした飴で気力を恢復し、チャタラ達の状態異常をもらってから、作業を再開した。はちみつの箱を収納し終え、貝ぼたんの箱も収納する。箱は、あっちにはないものでできてるかもしれないけれど、収納空間から出さなければ問題ないだろう。
はちみつと貝ぼたんをすべて収納し、俺は倉庫を出た。




