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ふたりはツーリングをしているらしい。
坂道は俺の脚力では自転車をこげないので、おして歩きながら、お喋りした。「新婚旅行ですか」
「はい」
「三ヶ月前に、北海道を出発して……沖縄についたら、一回東京へ戻って、今度は海外へ行くんです」
「そっちでも自転車旅しようって思ってて」
へー。夢があるなあ。
費用はきちんと用意しているけど、どちらもホームページ制作などの技術があり、資金が足りなくなったらそういうお仕事でなんとかする予定らしい。あとは、SNSを複数やっていて、その広告収入もあるんだって。絶景から生配信! みたいなことをやってるそう。玉花荘は許可をとれば撮影できますよと伝えると、ふたりともにこっとした。
こつこつためた資金はあるし、収入源も複数あるといえ、お金をぜいたくにかけられる情況でもない。なので、お食事は基本的に、国内ではコンビニやお弁当のお店のものだし、お宿も成る丈安いところを選ぶそう。
今日、おじさんの旅館を選んだのは、手違いでらしい。本当はちょっと離れたところにあるホテルに予約を入れてたんだけど、ホテル側のミスでダブルブッキングになっていて、すでにお部屋が埋まってしまっていた。
「で、そこの支配人さんが、足りない分は出すので、玉花荘にって。予約もしてくれたんです」
「災難でしたね」
「そう思ったんですけど、いいところらしいし、マオさんが居てくれたんで助かりました」
さっき、駅の前でなのりあったのだ。あちらさんは、女性がエリカさん、男性はミチヒロさんだそう。
もしかしたら、おじさんが別で経営してるホテルかなあ。それとも、組合でつながりがあるとかだろうか。おじさんって、交友関係が豊かなんだよね。俺みたいに、基本誰とでも話せるけど何故か友達の少ない人間と違い(まじで何故?)、おじさんは誰とでも友達になれる。
なんでも、トレジャーハンターというのはチームで動くので、チームの雰囲気が悪くなるととれるお宝もとれない。だから、チームの雰囲気が悪くならないような立ち居振る舞いを身につけた、のだとか。遠洋漁業に行く漁師さんのような心構えである。そういえば、かつお漁船でバイトしてたって云ってたっけ、おじさん。それだけの心構えでもトレジャーはハントできてないけどさおじさん。
おじさんのことを考えていると切なくなってきた。おじさんは、埋蔵金が埋まっていると信じて掘りすすめたところから温泉がわいたので、旅館経営にのりだしたのだ。セレンディピティだけどなんか切ない。




