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 断って、奥にあるお手洗いをかりた。つゆもてづくりしているみたいで、かつおぶしのいい匂いと、黒砂糖か糖蜜らしい甘い香りがしてくる。

 用を足し、手をよく洗って、マルジャン達に魔力を譲渡すると、落ち着いた。セロベルさんもリエナさんも、きっと元気だし、四月の雨亭は今だって繁盛しているに違いない。みんながほーじくんの為を思って、俺が悪しき魂だということを黙ってくれているだろうから、四月の雨亭だって「悪しき魂と関わりのあったところ」と思われてはいない。

 きっと。

 席へ戻る。そのタイミングで、細くてつやつやのおそばが、山盛りになって運ばれてきた。女将さんはそれを俺の前へ置いて、ちょっと苦笑いする。

「てんぷらとおつゆもすぐに持ってきますから」

「はい」

 カウンタの目隠しのような高いところに、てんぷらののったバットが置かれる。帽子をかぶった亭主と、カウンタ越しに目が合った。含羞(はにか)み屋さんなのか、軽く会釈してふいっと顔を背け、立ち去る。

「すみません、愛想がなくて」

「いえ……」

 女将さんが、こちらもてんぷらが山盛りのバットを、おそばの横に配置した。つゆのはいった容器と、大根おろしのどんぶり、薬味のお皿、つゆのはいった徳利二本も並べられる。

「あの」てきぱきと、おつけもののお皿を並べている女将さんに、俺はちょっと戸惑いつつ云う。「大盛りは頼んでませんけど」

「あ、うちはこれで普通なんです。プラス二百円で、大盛りにもできますよ」

 まじで? 超絶いいお店じゃん。

 俺は思わず満面の笑みになり、ありがとうございますと云ってから、おそばを食べ始めた。


 おそばうまい。つるつるでのどごし最高。麺類って飲みものだよね。だから、のどごしが大切なのだ。おつゆもめっちゃおいしい!

 心憎いことに、おつゆはふた種類あった。片方はめんつゆ、片方はてんつゆだ。てんぷらはひとつひとつが大きいし、量も尋常ではないので、てんつゆがついてるのは嬉しい。大根おろしもたっぷりあるし。

 おそばはのどごしが素晴らしすぎて、あっという間に消えてなくなってしまった。「おそばもう一枚ください。あと、てんかすお握りひと皿と、えびてんも」

「はい!」

 女将さんの嬉しそうな声がした。

 追加注文はすぐに運ばれてきた。えびはさ、向こうではめったに食べられないものだったからさあ。しかも大きなのじゃなくて、小さいのがいち尾二尾だもんな。こんな大きいえび久々だよ。ああうまい。

 二枚目もつるりと戴いてしまい、三枚目を大盛りで注文した。これなら最初から大盛りにしとけばよかったな。


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こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
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