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「おう、真緒、はええのお」
「おはよう」
会議室にはおじさんが居た。昨日あったラップトップは片付けられ、宝石も残り数箱にまで減っている。お部屋の隅には、プラスチックの箱がからの状態で積んであった。
俺はそれを見ていた目を、おじさんへ戻す。おじさんは椅子に腰掛けて、綺麗な革張りの箱にはいった、いくつものアクセサリを眺めていた。金属部分は銀だろうが、宝石はそのほとんどが、ぱっと見てもわかるがらす製の模造品だ。銀だけのアクセサリも、沢山あった。
おじさんが顔を上げる。にやっとされた。
「お前、云いよったじゃろう。銀が一番高価ち」
「うん」
「これはな、俺が昔、集めたもんじゃ。石はほとんどがらすじゃけど、金属のところはほんとの銀やけん、お前にやろうと思うての」
「え! いや、もらえないよ」
おじさんはにんまりする。
「遠慮するな。俺は今度のことで、がっぽり儲かるんじゃけん、これくらいせにゃ」
「でも」
「いいけん」
おじさんは箱の蓋を閉めて、俺におしつける。俺は落ちそうになった箱を両手でキャッチした。おじさんははっはっと笑う。「よし、そいじゃあ真緒、宝石を出してくれ」
結局、おじさんが集めていたというアクセサリは、箱ごと収納した。おじさんの厚意だし、餞別のようなつもりらしいから、断れない。
おじさんに手伝ってもらって、やわらかい布を敷いた箱のなかへ宝石類を並べた。それにも一時間くらいかかる。昨日、一度やっているので、今日は効率よく作業できた。
会議室が宝物殿みたいになったところで、打ち止めだ。俺とおじさんは廊下へ出て、会議室の扉を厳重に施錠し、レストランへ向かった。宴会場の鍵はおじさんに渡しておく。朝ご飯だ!
レストランには朝食をとるお客さんがちらほら居る。それに、ゆったりしたワンピースとカーディガンの妹が来ていた。熱はすっかりひいたみたいで、すいかと桃をおいしそうに食べている。
「抗生物質は」
「服んだ」
妹の隣へ座った。おじさんは妹の向かいだ。
ウェイターさんが来て、俺もおじさんも朝食のセットを注文する。妹が云った。「桃、もう一皿ください」
ウェイターさんはにっこりと、かしこまりましたと云って、居なくなる。桃は皮がついていて、歯ごたえがよそうな、新鮮なものだった。俺もあとで頼もう。
朝食はすぐに運ばれてきて、俺は桃を追加注文した。おじさんが低声で、今日の午后に、貝ぼたんとはちみつの大壜が届くことになっている、と伝えてくれる。裏手にある倉庫へ搬入するので、そこで収納してほしい、と。




