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その後、じゅうたんなどのことで、少し話した。明日、鑑定してくれる会社へ、運んでいくそうだ。朝はやくにその会社からトラックが来るので、そこに積み込んでほしいとのこと。
「傷まんように、特別なケースを用意してくれちょるらしいわ」
「え、俺がそれに全部いれるの? やりかたわかんないよ」
「いや、何人か、そういう係の人間が一緒に来るち。じゃけん、宴会場を開けるけん、お前はそこにじゅうたんを出しちょってくれ。あとは任せればいい」
おじさんは梅干しをひとつ、口にいれて、酸っぱそうな顔をした。
「大丈夫なのか」
「大丈夫」
妹が洗面所から出てきた。「しちくじい」
「凄い熱だったんだぞ」
「でももう下がったやん」
妹はしっかりしたあしどりでどこかへ行き、すぐに戻った。「戸締まりした」
「ああ、こっちの窓も閉めたぞ」
妹は頷いて、リモコンを手にとり、TVをつける。ニュース番組だ。俺は顔をしかめる。
「寝れ」
「さっき眠ったけん、目がさえちょるの」
なんとなく、機嫌がよくないらしい。俺は溜め息を吐いて、妹の向かいへ座る。「アイスの恨みか?」
笑われた。あれ、違う?
妹はくすくすしている。
「そんな訳ないやん……お医者さんのこと」
「医者?」
「診てもらわんでいいって云ったやん。実際、熱、すぐに下がったし」
妹はあの時、意識がなかったから、ヤラが治療してくれたことは知らないらしい。俺は苦笑いになった。
使役しているチャタラのうちの一頭に治療させたのだ、というようなことを説明した。妹はぱっとこちらを見て、目をぱちぱちさせる。
「そうなん?」
「ああ。恢復魔法の威力、凄いみたいやわ」
「へえ……お礼、せんとな」
もう魔力をあげたよと云うと妹は微笑む。
TV画面をなんの気なし見ると、目撃が多発しているUMAについてやっていた。マルジャン達、うまく隠れてるかなあ。
八月六日の朝は、はやくに起きた。
妹はあのあと、結局ずっとTVを見ていたみたいで、居間で寝息をたてている。俺はTVの電源を切り、畳にまるまっている妹に夏用の掛け布団をかぶせ、身支度を調えてお部屋を出た。
宴会場の場所は知らない。お掃除中の従業員をつかまえて訊くと、そのひとがそのまま案内してくれる。上から見ると宴会場は、支配人室とは対称の位置にあるみたいだ。
途中、従業員におじさんから連絡がはいっていた。宴会場の準備が整ったとか、そういうことだろう。
宴会場の前では支配人が待っていて、俺はひとりで宴会場に這入った。これだけのスペースがあれば、じゅうたんもタペストリーも全部出せるかもしれない。




