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俺達がでかけたあとも、おじさんは鑑定の様子を見ていたらしい。「書類仕事なら会議室でもできるけんの。しのぶちゃんは休憩とろうとせんけん、俺が途中で無理に休ませた」
おじさんは自慢するみたいにそう云った。
まあでも、あれだけの作業を途中休憩なし(お手洗いには行ってたけど、それだけ)で続けるのは、体に悪そうだ。おじさんが無理にでも鑑定士さんを休ませたのは、多分いいことなんだろう。
おじさんの様子からすると、あの鑑定士さんに対して少なからぬ好意があるみたいだから、一緒にお茶したいとかあったんだろうけどね。まあそれも、悪いことじゃないし、おじさんは鼻の下を伸ばしてでれでれするタイプでも、女性に対して高圧的なタイプでもない。小学生がそのまま大きくなったようなひとだ。
埋蔵金とか沈没船とかをさがしてて、そりゃ勿論一攫千金っていうのも夢なんだろうけれど、どちらかというとロマンを求めてるのが、いい意味で子どもっぽい。
「とんでもない金額になりそうじゃけど、しのぶちゃんとこは金があるけん、なんとかなるらしいわ」
「必要なものを買えるくらいでいいよ。あとはおじさんが管理して」
「なん、云うちょる」
「だって、どれだけ時間がかかるか、わかんないからさ」
肩をすくめた。「封印解除まで。もしかしたら、明日にでも、っていうか今この瞬間に解除してもおかしくない。どっちにしても、全部のお金を俺がつかうのは、多分不可能だよ。だから、おじさんに頼んでる」
「お前、欲がねえのう」
苦笑いした。
「そんなことないよ。チョコ持って行きたいっていう欲があるもん。それに、こっちのお金はどのみち向こうじゃつかえない。持ってても無駄だからさ」
俺は欲深くてわがままなのだ。だから、面倒なことはこうやっておじさんにおしつけようとしている。
「とにかく、おじさんにはいろいろ、丸投げしちゃってるから、代行してくれたお礼ってことで」
「いやあ、それは、残りを全部っちゅうのはさすがに荷が重い。お前達家族でなんとかしい」
「お父さんもお母さんも、こういうの慣れてないよ」
「水佳ならわかるじゃろう」
「それはそうかもしれないけど」
「俺に任せるんじゃったら、俺は勝手にそうする」
そう云われるとどうしようもない。俺は反論できずにひきさがる。
妹がちょんと、袖をひっぱってきた。見ると、上目遣いで俺を睨んでいる。「なんだよ」
「……アイス食べたい」
「お薬服んだばっかりだからだめ」
妹は口を尖らせ、お兄ちゃんのけち、とささやいた。




