3394
看護師さんが帰っていって、五分くらいでお食事が届いた。従業員達が食事の席を整えるのを見ながら、おじさんに耳打ちする。「レストラン、まだあいてるの」
「十一時まであいちょる」おじさんは自慢げだ。「それまでやったら、代金さえ払えばどんなもんでもつくっちくれるぞ」
従業員達が居なくなって、妹がケータイ片手にのっそりやってきた。肩にはタオルケットを羽織っている。まだ微熱があるらしいから、寒気がするのだろう。
「大丈夫か?」
「だいじょうぶだってば……あ、水佳の好きな太刀魚!」
妹はぴょんっと座布団の上に正座して、ケータイを畳へ置いた。太刀魚のみりん干しをあぶったものに、目が釘付けだ。
俺とおじさんは苦笑いで、それぞれ座った。俺は妹の隣、おじさんは俺の向かいだ。
「ほら、食べすぎるなよ」
土鍋からおかゆを器へよそい、妹の前へ置いた。妹はうれしそうに戴きますと云って、みりん干しをひと切れおかゆにのせる。俺はおじさんと自分に、ご飯をよそった。
しばらく、無言で食べた。妹はちゃんと、よく嚙んで、あまり食べすぎないようにしているらしい。俺はみりん干しをかじり、ご飯を食べ、お味噌汁をすする。お豆腐とねぎ、干ししいたけ、隠し味に生姜の絞り汁。麦味噌。最高においしい。
粕漬けや柴漬け、高菜漬けなども満喫した。朝食のようなメニューだが、風邪をひいた(と、思われている)妹に配慮したのだろう。おじさんは気遣いが憎い。
「おかわり」
「食べすぎてないか」
「おかわりちわ」
妹が譲らないので、おかゆをもう一杯よそった。「お兄ちゃん大好き」
「くいものくらいで大好きとか云わない」
「お兄ちゃんだっておんなじやろ。おいしいものもらったらころっと掌返すくせに」
云い返せないので黙っておいた。いやほんとに、そうです。返す言葉もございません。
妹は結局、用意されていたおかゆを全部食べた。俺とおじさんも、ふたりでおひつをからにしている。おかずもお味噌汁も、なくなった。残ったのは、旅館自家製のすっぱい梅干しだ。
おじさんが番茶を淹れ、梅干しをおともに飲んだ。妹はお水でお薬を服んでいる。おかゆのおともで梅干しをすでに三個食べたらしい。錠剤にはいやな顔をしたものの、俺が強めに服むように云ったので、渋々という感じで服んでいた。
番茶と梅干しはあう。お茶は苦手だが、この組み合わせならば大丈夫だ。気分が和らぐと、宝石のことが気になる。
「おじさん、宝石の鑑定、どうなった?」
「ばっちりじゃ」




