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 食べものをわけること、だ。


 俺の記憶が正しければ、ツィーさまは、リッターくんがお握りをわけてくれないと嘆いていた。

 俺が、ミューくんの怪我を心配して訪ねてきたリッターくんに、リッターくんとその家族の分も、と考えて、かなり多めにお握りの包みを渡した時だ。リッターくんは黙ってそれを確保し、食べはじめた。隣に座っているツィーさまには決して、ひとつたりとも、お握りをあげようとはしなかった。

 リッターくんは本当にお握りが好きなのだ。それでツィーさまが、一番仲好しの僕にもわけてくれない、とちょっとおどけた様子で嘆いていた。

 そのやりとりがあったから、俺はあらためて、家族分のお握りをツィーさまに預け、お礼にとブラックオパールのペンダントをもらったのだ。

 そう、それでその直前の会話がぼやけてしまった。

 ブラックオパールは俺にとって好きな宝石だし、魔力が底上げされるという効果付きのめずらしいもの、しかもレフオーブル家からくだされたのだと聴いたら、衝撃をうけてその前のやりとりがかすんでも仕方ないと思う。リッターくんでさえ、レフオーブルからもらったものを勝手に扱ったらまずいのではないか、というようなことを云っていた。ツィーさまは、もらったものだから自由にしていいと云っていたけれど、俺はあの頃にはだいぶ、レフオーブルの凄さを理解していたから、どうしようかと焦った筈だ。返すに返せず、収納したけど。

 大体あの時は、ジーナちゃんが隠れていたり、ティーくんのお店のことを考える必要があったり、ミューくんの怪我のことがあったり、ほかにもいろいろと物事が重なっていた。小さなことに注意を払う余裕はなかった。

 でも、さっき、思い出した。

 リッターくんは、尊敬している家族にも、お握りをわけない。一応(あるじ)であるユラちゃんにだって、絶対に譲ろうとはしない。リッターくんのお握り愛は、権力にも屈しないのだ。大好物だから、特別好きなひととしかわけあいたくないということだろう。

 それともリッターくんは、好きな相手にならどんな食べものでも優先権を譲るのかもしれない。()に対して、リッターくんは何度も譲っていた。同じお菓子をとりそうになったら、いつだって手をひっこめるのはリッターくんだった。リッターくんは、何度も、ひきさがってたじゃないか。

 リッターくんがお握りをあげた相手は、俺はひとりしか知らない。そのひとりに対して、リッターくんは少なくとも二回、お握りをわけている。

 サキくんに。


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こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
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