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「どうしたの?」
腕を組んで唸る俺に、妹が心配そうに訊いてくる。俺は右に傾けていた頭を左に傾ける。妹は鏡みたいに似た動きをして、俺の腕を軽くひっぱった。
「なに?」
「ちょっと……ああ。もしかしたらってことに気付いた」
「もしかしたら?」
頷く。
俺が論拠にしているのは、ツィーさまとアーデルさまの発言だ。
リッターくんが、好きな子には特別、優しくする、というやつ。あれが事実だと仮定して、の話だ。もし、それがツィーさま達の主観であって、実際は違うのなら、突然俺に降ってきたひらめきはまったくの無意味である。
リッターくんが、好きな相手には特別、優しくする、と、仮定する。
リッターくんにとって、優しい、もしくは特別扱いする、とはなにか、だ。そこが重要なんだ。
リッターくんは、ウロアの件でけもみみさん達をロヴィオダーリ家でひきとるって話になった時に、けもみみだからっていう理由で廃嫡されたツィーさまのことを喋っていた。凄くいいお兄さんで、尊敬している、というようなことを。それに、ツィーさまやアーデルさまと一緒に居るリッターくんを見たけれど、本当にお兄さん達になついている様子だった。
それに、ロヴィオダーリ卿だ。リッターくんのお父さん。リッターくんは、お父さんに対してもとても優しかったし、態度からするとかなり尊敬しているみたいに見えた。不倒の検証についても、おかしなことだとは思っていないみたいだったし。
で、ミューくんだ。それに、マルロさん。マイファレット嬢。
癒しの力を持っているか、恢復魔法をつかえるひとに対するリッターくんの崇敬は、もの凄く強い。自分は癒し手にはなれない、だからひとをまもれる護衛士になりたい、と云っていた。あれって、もし癒し手になれるのならなりたい、みたいな意味だと思う。
実際、ミューくんとは距離を詰めようと頑張っているし、マイファレット嬢のことはどうにかまもろうとしていたし、マルロさんにもとても丁寧な態度だった。単なる娼妓だと思われてた頃の俺に対する態度の百倍くらい丁寧。まじで。言葉遣い含めてまったく違うからな。最初のリッターくんは、結構な無礼者だった。
それでだ。
リッターくんは、お父さんやお兄さん達を尊敬していて、好いている。癒しの力を持っているひとや、恢復魔法をつかえるひと、癒し手に対しても。それで、相応の礼を尽くし、尊敬や好意を具体的な好意であらわしている。
でも、リッターくんがどれだけ尊敬している相手にでもしていない行為がある。




