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ロビーにつくと、妹はフロントに頼んで、車を手配していた。ここから駅まで運んでもらうのだ。その後、妹は数日宿泊期間を伸ばすと伝えてその分のお金を払い、いたずらっぽく俺に微笑む。「これでダイアモンドの指環、くれない?」
「高すぎるよ」
俺の返しに、妹は楽しそうに声をたてて笑った。
タクシーはすぐに来て、俺たちは駅まで移動し、折よくホームに滑りこんだ電車にのった。そのまま特に喋ることもなく、ふた駅目で降りる。手芸店は駅の目と鼻の先にあるそうなので、俺と妹はそこまで歩いた。
妹はぴょん、ぴょん、と、はねるように歩く。「買いものしたら、ラーメン食べて帰ろ」
「ああ。なにがおすすめ?」
「チャーシュー麺かな。湯麺もおいしいよ」
「じゃあ両方食べようかな。お前はなに食べるの」
「チャーシュー麺のチャーシュートッピング」
手芸店は四階建てのビルで、お客さんでにぎわっていた。俺たちは案内図をたしかめて、階段で二階へのぼる。そこは、お裁縫に必要な道具や材料を売っているフロアで、なんと、ぼたんが安く量り売りされている。俺の為にあるようなお店である。見つけてくれた妹に大感謝だ。
量り売りのぼたんはB品で、ちょっと傷があったり穴の位置がずれていたりするらしい。だから安く売れるらしいけれど、常にある訳ではない。幸運なことに、今日はあった。円筒形の透明な容器が沢山並んでいて、中身がはいっている。幾つかはからだった。
ちょっとの傷くらい、あちらの世界のひとなら気にしないだろう。あのサイズのぼたんは神さまをあらわす縁起物であって、日用品ではない。服につかうなら、触る度に傷が気になるかもしれないが、そういうつかいかたはしない。
髪飾りにするひとは居るけど……ほんの少しの傷や、穴の位置のずれなら、なんとかごまかせるんじゃないかな。多分。
それか、緑珠さんが少しゆがんだ真珠を割安で売っていたみたいに、これもB品として割安で売ればいいかもしれない。そのほうが文句も出なそうだし、安全かな。
傷のある小さなぼたんが神への冒涜、とか、天罰、みたいに捉えられるって可能性はあるが、それならすぐにひっこめればいい。俺は逃げ足はそれなりにはやいのだ。
逃げる為には、やっぱり頼れる魔物が必要だな。マルジャン達も、俺の封印解除とともにあちらへ戻ると仮定して、一応チャタラ二頭という、ビミョーに頼れるのかそうでないのかわからない手勢は居るが。
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