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封印が解けたら、どこに飛ばされるのか、だけど、御山に戻るというのが可能性としては高いかな、と思ってる。俺は御山で封印された。イメージ的には、その場所に封印されている、という感じだし。
でも、その辺もわからないんだよな。封印に関する資料にあったじゃん? 祇畏士を殺したら、殺した現場に、封印されていた魔物が出てきた、ってやつ。
そう。
ってことは、封印が解けたら……。
妹に腕を引っ張られた。「お兄ちゃん」
「……うん」
微笑む。「買いもの、行こうか」
妹はにこっとして、きがえてくる、と寝室へ行った。
どちらにしても、あちらの世界でお金になるものは必要だ。悪しき魂が安全に暮らすのには絶対に、お金がかかる。
スキルをつかおうと思わなければ。
妹はタンクトップとショートパンツにサマーカーディガン、という、結構な露出の格好にかえて戻ってきた。「タイツ、はいたら?」
「暑いから」
はいとタオルを渡され、俺は苦笑してそれを収納した。うちの人間は、でかける時にタオルか手巾か手拭いを、かならず携行する。それにティシュも。
妹は小さなショルダーバッグに必要なものを詰め、俺の手をひっぱる。外に出て、俺が錠をかける間に、妹がおじさんに買いもののことを、ケータイで伝えた。ふたりでとぼとぼ、ロビーまで歩く。
はなれから外へは、直接は出られない。そうしないと、お金を払わずに逃げてしまうひとが出ないとも限らないからな。この旅館では、宿泊費とレストラン代でぎりぎりというひとも居るだろうとおじさんが見越していて、保証金は預からない。
「おじさん、自分の会社で売ればいいのにね」
「そうするつもりかもしれんね。おじさん、宝石好きな割に、値段なんかわかってないけん、その為に鑑定してもらってたりして」
妹はくすっとする。「でも、お兄ちゃんにずっと仕入れしてもらうわけにいかんし、仕方のない措置やろ」
「そうだな」
俺もつられて笑う。そうだ。俺は何度も封印されたくはないし、多分、次ほーじくんに会ったら、彼は俺を封印ではなく、滅却しようとするだろう。
妹の云うように、俺に対して罪悪感があったから封印したのだとしたら、もしかしたら、きちんと話し合えばもしかしたら。
現実を見たらがっかりするだろうに、俺はつい、ほーじくんと和解できたらいいと考えてしまっている。あちらの常識がかわりでもしない限り、そんなことは不可能だろうとわかっていても、ほーじくんとの間に溝があるのはつらいことだ。




