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さいわい、ほしいものの単価が安いし、とんでもない額のお金が必要な訳じゃない。尚更、感じのいいひとを選ぶ。まあそもそも、おじさんがつれてきたひとだから、信頼できるのは当然なのだ。あのおじさんだからな。
妹はにこっとする。
「それじゃあ、後は水佳達の仕事だね。お兄ちゃんに必要なもの、おじさんとふたりでちゃんと用意するから、心配しないで」
「お前とおじさんに任せて、心配する人間は居ないよ」
それは大真面目に、本気で云ったのだけれど、妹は冗談と捉えたようでくすくす笑った。
食後、会議室へ戻ると、鑑定の様子を見ていても仕方ない、とおじさんが云ってくれて、俺と妹はおじさんとは別行動をとることになった。
まだ、宝石を幾らで売るか、など、決まってはいない。ある程度の金額にはなると予測はしているが、そのお金が今、手許にある訳じゃない。
けど、俺には子役時代の蓄えと、おじさんの旅館で働いていた時のお金が少しある。親が昔契約してくれた定期預金もあるし……。
封印は(メニューを見るに、だが)今すぐ解ける訳ではない、といっても、いつ何時、急速にカウンタがまわりはじめるかわからない。それはおじさんにも妹にも、説明はしてある。
おじさんには俺が悪しき魂だとか、封印されたのだとかは云っていない。その辺をぼかしてだったので、俺の説明をいまいち理解できていないらしかったが、もしかしたらいきなり異世界へ戻ることもあるかも、というのだけはなんとか通じている。だからか、今から必要そうなものを買うのがいいだろうと助言された。
おじさんは、トレジャーハンターとしての発言以外はほぼすべて信頼できる。俺と妹はお部屋へ戻り、備え付けのPCを起動させた。使用料を別に払えば、PCもつかえるのだ。チェックアウトの時にしっかり請求されるから問題ない。
妹がネット通販のサイトを開いている。「別料金で、明日中に配達してくれるって」
「急いだほうがいいかな」
「いいと思う」
「じゃあ、それで」
妹はお辞儀のような真似をしてから、はちみつを注文した。容器はなんでもかまわないが、はちみつ100%のものを買うように頼んである。「あ、百花蜜って云うのもあるけど。うわ、こんなに高いん? 百花蜜つかったお菓子、売ってたよな、ここ」
「百花蜜はたしかに、結構な価格だけど、それでも感覚としては、あっちでは三倍から五倍くらいの値段になるよ」
妹はしかめた顔をこちらへ向ける。不機嫌な狛犬みたいな顔だ。可愛くて、笑ってしまった。




