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鑑定士さんはまったく休憩をとらない。鑑定士さんの部下達もだ。
俺とおじさんはケーキと紅茶を楽しみ、おじさんは子どもみたいに鑑定士さんに呼びかける。「しのぶちゃんの好きなエクレアもあるで」
「うん」
「ミルクティもできるけん、飲みたかったら云うてくれ」
おじさんはひとりで頷き、追加で持ってこさせたこんぺいとーをかじっている。俺もそうした。おじさんは甘いものが好きだが、そこまで量は食べない。
「あー、疲れた」
妹が溜め息まじりに云って、右手でうなじ辺りをもんだ。箱は三分の二も埋まっていない。
アップルパイがふた切れのったお皿を渡す。妹はありがとうと力なく云って、アップルパイをかじった。
三人並んで、ケーキやお菓子を食べながら、鑑定士さん達の様子を見ている。なんだかシュールな情況だ。
「おじさん、例の動画のことやけど」
「ああ、編集が遅れてるらしいな」
「うん。さっき連絡があって、今日のうちにデータを送るから、確認してって」
俺を間にはさんで、お仕事の話がはじまってしまった。俺はのんきに、抹茶チーズケーキを食べている。上にのってる抹茶のマカロンがうまい。軽めのチーズで、抹茶の風味が死んでない。
俺の予想通り、宝石の鑑定はまったく終わらず、俺と妹は一旦離脱した。レストランへ逃げたのだ。
「こういうのもあるけど」
「お兄ちゃん、ピザ掴んだ手でエメラルドなんて触らないでよ、汚れちゃうでしょ」
叱られたのでエメラルドをポケット(内に開いた収納空間の口)へ落とした。山菜ピザを掴んでかじる。マヨネーズがかかってるのがおいしいんだよね。
ピザを二枚食べ、山菜おこわを注文した。妹はますの塩焼きを食べている。
声をひそめた。
「とりあえず、にせものってことはないみたいやな。安心した」
本音だ。あちらではあまりに価値が低かったから、こちらでどういう扱いになるのか、不安はずっとあった。
妹は肩をすくめ、山菜のおひたしをつつく。
「あれが偽ものの訳……まあ、とにかく、おじさんの顔がひろくてよかったわ」
「そうやな」
「信頼できるひとらしいし。お兄ちゃん、あのひとに任せるんやろ?」
頷いた。おじさんが信頼している人だから、信頼できるのだろう。それに、俺や妹に対して、凄く感じがよかった。
俺はあちらへ持って行きたいものを手にいれられるくらいのお金があれば、それで充分なのだ。それだったら、「成る丈高くかいとってくれるひと」よりも「感じがいいひと」を選ぶ。その辺は気持ちの問題だからな。
感想ありがとうございます。
悪しき魂がばれてるとしてもばれてないとしても、結構ないばらの道だなあと考えている感じです。




