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当然だが、そういった犯罪行為に目を瞑る旅館ではない。その都度、しっかり警察へ通報して、対処してもらっている。レストランで無断撮影もアウトなのに、どうして浴場にカメラを持ち込んで無事だと思っているのかわからない。不思議だ。
外聞が悪いとかなんとかで警察へ通報することをためらうおじさんではないし、従業員もきちんと対応するように研修をうけている。なにかあったらすぐに司法の手に委ねる、安心安全なお宿である。
妹は金とアクアオーラのネックレスを不採用にしたらしく、自分用の箱にはいれなかった。次は、大きなダイアモンドがトップできらきらしているネックレスを吟味する。両手で慎重に持ち上げて、首にあてたりしているが、いまいち響かないらしい。「ダイアモンドって、重たいなあ」
「それは肩がこるぞ。プラチナも重たいから」
「やめとこうかな……」
俺は、ダイアモンドのネックレスとルビーのネックレスとを比較している妹に断って、妹が気にいったものをいれている箱に、びろうどを敷く。
これで多少は、傷付きにくいだろう。あちらでは雑に売っているものだから、宝石用の箱みたいな上等なものは持っていない。だから容れものを融通してやることができない。不甲斐ない。
あちらではこれくらいのもの、ざるみたいなかごとか、少し深めのお皿にいれて売ってるからな。あれを見せたら、鑑定士さん達が怒りそうだ。
箱の中身はあんまり増えていない。妹は控えめ、もしくは慎重な性格である。
効果のついた宝石は、きちんとした箱にいれられると聴いてはいるが、実物にはそうそうお目にかからない。そもそも効果のついた宝石自体がめずらしいし、そういうものは可及的速やかに装備品へと加工され、等級の高い傭兵や偉大な魔法研究家などの手に渡るのだ。
ミューくんにかしたままのブレスレットは、「ブレスレット」に効果がついているのか、「ブレスレットにつかわれている宝石」に効果があるのか、どちらなんだろう。あれを、ラシェジル治療のお礼としてもらった時は、緑珠さんが同じ世界出身かもってことで頭がいっぱいで、気もそぞろだった。説明をきちんと聴けていなかったのだ。どっちだったろう……。
ミューくん、あのブレスレット、捨てちゃったかな。
魔につかれた人間から預かったものなんて、いやだよなあ。当然捨ててるだろう。あのブレスレットがどれだけ有用で、価値の高いものであっても、縁起が悪すぎる。




