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俺とおじさんは紅茶とケーキを楽しみ、妹も手を停めて参加した。鑑定士さんはそれどころではないみたいで、ずっと立ったまま、宝石を鑑定し続けている。紙がなくなり、鑑定士さんは自分の手帳から紙を破りとって、それに鑑定内容を書いていた。
「おじさん」
俺はチョコケーキを食べ終え、紅茶をすする。「鑑定料、大丈夫なの?」
「買いとってもろうて、そこから鑑定料を引いてもらうことになっちょる。だめじゃったかのう」
「ううん、それならありがたいよ」
鑑定料の相場は知らないが、これだけの量を鑑定してもらうのだから、拘束時間は凄まじい。繊細な作業だし……鑑定書を書いてもらうのかどうかはわからないが、書いてもらうとしたら更にお金はかかるだろうな。鑑定士さんはひまではないのだ。
ちょっと心配だったので、かいとってもらってそこから引く、というのは安心できた。さすがおじさん。
妹はマンゴータルトをもぐもぐして、右手を前につきだした。人差し指にダイアモンドの指輪がはまっている。手がひっこんで、今度はアクアマリンの指輪がはまって出てくる。「なやみ中?」
「うん」妹は頷いて、マンゴータルトの残りを頬張った。「指環、沢山あっても、水佳の指は十本だから、なやむ」
妹はこういうところが可愛い。
一時間くらいして、スーツ姿の男女がふたりずつやってきた。そのうちふたりが大きめの鞄を持っていた。鑑定士さんの部下だ。
「こっち、写真お願い」鑑定士さんが指示した。「丁寧に」
「はい、先生」
先生、という響きは鑑定士さんにぴったりだった。おじさんもそう感じたみたいで、頷いている。
四人の助っ人が来たことで、鑑定スピードは上がった。鑑定士さん含めて四人が鑑定し、それにどういう意味があるのかはわからないが、残りひとりが写真を撮っている。
俺はまだまだなやんでいる妹に、顔を向けた。
「あっちにも欲しいものあったら、とっていいよ」
「うん……」
妹は集中していて、俺の言葉をききながしているようだ。苦笑いしてしまった。「さっきお前が云ってたみたいに、いざという時の資金のつもりで持ってたら? 金とかプラチナも沢山あるよ」
「お兄ちゃんにそこまでしてもらったら悪いもん」
「たまには兄貴面させろよ」
俺が子役をやっていた所為で、妹には淋しい思いもさせている。そもそも仕事で忙しい父母が、折角の休みに、俺の撮影に付き合わされたりな。
だから、妹にこれくらいの贈りものをする義務は、俺にはある。
次、あちらの世界へ行ったら、多分もう会えないのだろうし。




