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鑑定がすんだ宝石は、鑑定士さんの要望で、やわらかい布をしいたからの箱に綺麗に並べられた。プラスチックの箱に乱雑にいれてあるなんて信じられない、という顔だが、鑑定士さんはそれを云うことはなかった。
適当にいれたのはよくなかったかな。表面に傷がつきそう。ダイアモンドなら傷付きにくいらしいが、もろいものもある。ちょっと傷がついても価値が下がってしまうものみたいだから、雑に扱うんじゃなかった。
鑑定士さんはひとつ鑑定すると、小さな紙になにか書いて、鑑定したものの傍へ置く。名前と大きさ、重さ、おおよその価格が書いてあるようだ。鑑定士さんは持っていたノギスでサイズをはかり、小さな電子スケールで重さをはかっていた。おじさんが興味深そうに聴いたところによると、スケールは最新式のもので、相当正確な数値が出るらしい。
席を立ってちょっと見てみると、大きなエメラルドひと粒に、三百万円の値がついていた。まじで? あれって多分、サキくんがくれたやつだけど、還元さえできれば誰だって手にいれられるようなものだって聴いてる。いやそれは、還元が得意なサキくんの謙遜というか、自己評価が低くてそういう云いかたになったんだろうけれど、でもこれくらいなら、ひと盛り幾らのかごにはいってるペンダントなんかについてるサイズだぜ。
いやー、わからん。異世界に慣れすぎて、こっちの価値観が変に思えてる。だって還元で手にはいるんだぞ。真珠は還元で手にはいらないみたいだから、高いのわかるけど、エメラルドなんてレント歩いてたら道端に転がってる。エメラルドに限らず、大粒の宝石はよくその辺にうち捨てられているのだ。だって加工が面倒だから。
そりゃそうだ。小粒の宝石も沢山、還元で手にはいる。効果がある宝石じゃない限り、大きすぎると割るのも面倒だし、アクセサリにしてなにも効果がつかないと大仰なだけで見場が悪いしと、細工士さん達があんまり好まないらしい。大粒な宝石を身につけたがる、荒れ地近くの村のひと達は別だけど、レントではそこまで大粒のものは好まれなかった。あれくらいの大きさだと、精々ペーパーウェイトにするくらいしか使い途がないと考えられている。
子どもが石蹴りならぬ宝石蹴りをして遊んでいたり、見たことある。そんなもんだって。
「申し訳ないけど」
ひと箱も終わらないうちに、鑑定士さんはとても疲れた様子で目を瞑り、片手を軽くあげた。「わたしひとりでは手に負えない。部下を何人か、呼んでもいい?」
「しのぶちゃんがそうしたいんやったら、そうしてくれ。ただ」
「わかってる。約束はまもります」




