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妹はきらきらが好きだが、そこまでくわしい訳でもないらしい。椅子を二脚、お部屋の隅に置いて、その片方に腰掛け、俺が適当にアクセサリとルースジェムを注ぎこんだ箱を膝に置いて、吟味している。安すぎると妹は渋ったが、100gをケーキワンホールとひきかえにするということで話はついた。俺にとっては高すぎる。
あいた椅子にはからの箱を置いてある。気にいればそちらへいれるのだ。今のところ、まだ指環とペンダントがひとつずつしかはいっていない。ピアスがやたら多いから、それをよりわけるのに苦労しているらしかった。
俺は妹の様子をちょっと見てから、錠を外して廊下へ出た。支配人室の扉を軽く叩く。
「おじさん、準備できたよ」
なかから、おう、とおじさんの返事がした。
すぐに、おじさんと鑑定士さんが出てくる。話は弾んでいたみたいで、おじさんが楽しそうに笑っていた。「次の同窓会が楽しみじゃの」
「な。ちゃんと淀さんにも伝えておくわ」
鑑定士さんは俺に軽くお辞儀して、おじさんに促されるまま会議室へ移動する。俺もその後ろについて歩いた。「まっ!」
鑑定士さんの悲鳴が聴こえてきた。
俺はおじさんと鑑定士さんに数歩遅れて、会議室へ這入る。
鑑定士さんは目をまんまるにして、長テーブルの上を見ている。俺はおじさんへ云う。「これで半分ないくらいだよ」
「そうか」
おじさんもちょっと驚いたようだった。鑑定士さんが俺を振り返り、なにか云おうとしたらしかったが、黙る。そして、おじさんを見た。
「なあ……いえ、とにかく、鑑定します」
「ああ。わりいな、しのぶちゃん」
おじさんが恐縮した様子で首をすくめた。鑑定士さんはごくっとつばをのんで、重なった箱のひとつをとる。いつの間にかその手には手袋がはまっていて、右手にはルーペのようなものを持っていた。
鑑定士さんは大粒のエメラルドを持って、灯にかざしたり、ルーペで見たりしている。俺は椅子を妹の隣に置いて、腰掛けた。「どう? いいのある?」
「これ綺麗」
妹はオブシディアンを削り出した指環をつつく。少し席を外したすきに、箱の中身は増えているらしい。
「しのぶちゃん、緑茶はきらいやったの」
「ええ……」
おじさんが内線電話で、紅茶を持ってくるように指示していた。俺は片手をあげる。「おじさん、俺も」
「おう。四人分用意してくれ」
おじさんは受話器を架台へ戻して、満足そうに頷いている。俺は鑑定士さんに見えない位置で、妹の好みに合いそうなアクセサリや宝石を、よりわけ前の箱に追加した。時間がかかりそうだ。




