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支配人室の隣のお部屋は、どうやら会議室らしい。立派な長テーブルと、数脚の椅子があった。長テーブルの上にはラップトップが置いてる。
妹が灯をつけ、窓を半分開ける。空気がこもっている感じで、なんとなくなまぐさかった。温泉の匂いだと思う。窓が開くと、かすかな匂いはすぐになくなった。
「ここに全部出せる?」
「箱があったら、重ねればなんとかなると思う」
「フロントに頼んでみるわ」
妹は壁に掛かった内線電話に手をのばし、受話器をとった。なんだか古くさい機種である。
「あ、林さん? 会議室に、箱を持ってきてくれますか。平たくて丈夫で、重ねられるのがいいんやけど。それをできるだけ沢山」
妹は俺の心が読めるみたいに、よさげな箱を発注してくれた。さすが我が妹。
しかし、フロントのひとは林さんというのか。どちらか知らないけど。
どちらにしても、林さんの対応は迅速だった。すぐに、半透明のプラスチックの平たい箱を、従業員ふたりが台車にのせて持ってきてくれたのだ。
ふたりにお礼を云い、台車ごと箱をうけとった。俺は邪魔になるラップトップを従業員に渡し、妹がふたりを追い出して窓と扉を閉めた。錠をかける。誰にも見られないように、だ。
そこからは単なる作業だ。まずテーブルに箱を並べ、俺がそのなかに、まず貴金属をいれる。重たいものから、と考えて、金やプラチナを優先したのだ。いっぱいになった箱には、妹が別の箱を重ねる。重ねられるようになっているのだ。こうやって重ねた時に、上に重たいものが来たら、崩れそうだもんな。俺は横にずれて、からの箱に貴金属をいれる。また、妹が箱を重ねる。
その繰り返しで、下のほうの段には貴金属、中くらいには貴金属をたっぷりつかった装飾品、上にはルース、と、テーブルの上にはきらきらしたものでいっぱいの箱が積み上がった。それでもまだ全部ではない。あんまり重ねると崩落しそうだし、三分の一程度で一旦、とりだすのをやめたのだ。
箱が半透明なので、重なっていても横から多少、なかが見える。きらきらしているようには見えず、鈍く光っているように見えた。妹が溜め息を吐く。「凄い……」
「欲しいものあったら、とっといたらいいよ」俺は持っていた、からの箱を示す。「適当にいれとこうか? お前用に」
「ほしいけど、これはちょっと」
「だから、そんなに高価なものじゃないんだって。お菓子とひきかえで、どう?」
妹はどうしてだか不満げに口を尖らせて、椅子に置いていた自分の鞄からお財布をとりだし、なかを覗く。




