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本を読むのは疲れたし、ドールさんから情報収集してみよう。
まったく勝算もなくそう決めて、外へ出た。と、おもやのほうからひとが来る。
シアナンさんだ。険しい表情だった。「マオ」
「あ。こんにちは」
「大丈夫かね?」
??
おもやへ行った。シアナンさんも一緒だ。もう日は暮れかけていて、はやめの晩御飯の時間だった。
ドールさんは不機嫌げで、給仕をすると、薬壜を風呂敷包みにし、ぺこっと会釈して出て行った。染め粉の配達だそう。
バドさんも来ていて、やけにおかわりをすすめられた。ご飯にトマトとお肉の煮込みをのせたもので、辛くないので二杯食べた。
シアナンさんとバドさんはうちで食べてきたと云ってドールさんの用意したお茶を飲んでいる。ドールさん、どうして機嫌が悪かったんだろう。なにか失礼なことをしてしまっただろうか?
シアナンさんが噛んで含めるように云った。「マオ、井の記録だが、まだ返答が来ていない。もう二・三日かかるようだ。安心して待っていなさい」
「はい。……あのー、ドールさん、どうかしたんですか?」
シアナンさんとバドさんが顔を見合わせた。「怒ってたみたいで……おれ、なにかぶれいなことしちゃったかなって」
「ああいや、そうじゃないよ。むしろ君は無礼を働かれたほう」
「シアナン」
バドさんがシアナンさんへ、ゆっくり頭を振った。シアナンさんが溜め息を吐く。
「あの?」
「いやいや、君はなんにも気にしなくていい。村の問題だよ」
「マオ、おかわりは?」
もう結構です、と断った。デザートに甘いほしいちじくが出てきた。
シアナンさんとバドさんに、本に書いてあって気になったので、と前おいて、幾つか質問してみた。
「井」について。
井は、各地にある、泉を中心に建てられた宗教施設。
泉や湖、かな。かなり大きいものもあるようだから。
それらは神さまが祝福した場所で、水面にパラメータが写るそう。十歳くらいになると保護者に連れられてお参りする。
建物の形は、八角形の、回廊みたいな? あずまやをつないだかんじかな。そういう説明だった。
そこには神降ろしさんや、占い師さんが居て、水面へパラメータをうつしてそれを書きとり、更に、適職診断と、将来どうしたらいいかを占ってもらう。
適職と、占いの結果もパラメータの下に書いて、それの控えを二枚つくり、一枚は「井」へ奉納し、一枚は神降ろしさんが保管する。
適職がひとつの場合は、そこでそのまま「宣言」してしまうこともあるらしい。適職は減らないかわりに増えないから。
「職業ってかえられるんですか?」
「無理ね」
バドさんが小さく苦笑した。




