3353
お皿をひきとりに来てもらった。「あ、白石くん」
従業員のなかに白石くんが居る。ぺこっとお辞儀していた。
お皿が外に置いてあるワゴンに積み上げられていくのを見ながら、妹が俺の傍に来て云った。
「知ってるひと?」
「今日、支配人室まで案内してもらった」
「ああ。可愛い子やな」
妹を見る。妹は肩を軽くすくめた。ううむ、白石くんいいやつだが、妹が興味をもつとなんか。ううむ。兄としては複雑な心境である。
妹はふっと笑い、離れていった。
「大浴場行ってくる」
おお、久し振りの温泉、俺も行こうかな。
妹と一緒に大浴場まで行った。勿論、お風呂場は男女で別れているので、出入り口の前でお別れだ。「フルーツ牛乳とコーヒー牛乳どっち?」
「アーモンドミルク」
「おしゃれかよ」
妹はきどった仕種で小首を傾げ、女湯へ這入っていった。俺は苦笑いで男湯へ這入る。
また、なんだか変な感じだが、髪の短い男性ばかりだし、アクセサリをつけているひとも稀だった。大丈夫なのこのひと達? 無防備すぎない? とつい頭をよぎって、いやいやこれが普通だ、と思い直す。
いざ温泉につかっても、奇妙な感覚は続いていた。もしセロベルさんやバルドさん、ズフダリフ先生辺りがこの場に居たら、顔をまっかにして逃げ出すことだろう。あちらの常識で育った男性には、どう考えても刺激が強すぎる光景である。
俺もあちらの感覚にだいぶ染まっていたんだなあ、と、あらためて実感した。なんだか変な感じだから。
しばらくぶりの温泉を満喫し、部屋着姿で出て行くと、浴衣を着た妹が白石くんを捕まえてお喋りしていた。むむ。
「あ、お兄ちゃん、遅かったね」
「ひさしぶりだったから。で、アーモンドミルクは?」
「買って」
白石くんがぺこぺこして、小走りに逃げていく。妹はそちらへ軽く手を振った。俺は、壁際に設置された自販機のほうへ行く。「あんまりからかってやるなよ」
「からかってないよ」
「勘違いさせたら可哀相」
「お兄ちゃん、心配してる?」
自販機にお金をいれて、ボタンを押した。アーモンドミルクと、甘い炭酸飲料だ。
「したら悪い?」
「ううん。ありがとう」
アーモンドミルクを渡した。妹は微笑んでいる。
並んでお部屋へ戻る。妹は洗面所で髪を乾かし、俺は炭酸飲料を飲みながらメニュー画面を見ていた。封印解除まで、まだまだ時間はある。マルジャン達の状態異常をひきとって起こった吐き気を、炭酸飲料でごまかす。
ケータイが鳴った。おじさんだ。俺は、妹も交えて相談したいと、おじさんに伝えた。




