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「どういうこと」
声をかすかに震わせ、妹は眉をひそめる。「じゃあ、ほーじくんが封印したものが、こっちの世界へ来てるってことなん?」
「それはわからん」
俺は頭を振った。
「封印に関しては、わからんことが多すぎる。それに、あちらの世界の成立自体が、こっちとは多分相当違う。開拓者が、ほかの世界からいろんな神さまや動物、人間なんかを流入させたっていう経緯があるから」
「さっき、云うてたな。もともとその神さまが居た世界は、どうしようもなくなって、逃げてきたんでしょ」
妹は俺の話を真剣に聴いていたらしい。しっかりと記憶している。
「そうや。やから、俺が思ってるのは、ふたつ。ひとつ目は単純に、あちらの世界で封印がつかわれたら、封印されたものはこちらの世界へ来る。もうひとつは、あちらで封印されたらもとの世界へ戻る。その種のもともとの出身世界へ、ってこと」
「ああ……」
「どちらでも、あちらの世界から切り離されることにかわりはない」
妹はもっと眉根を寄せる。
「なあ、戻れるかもって話は?」
頷いた。「可能性はあるけど、確実じゃないんだ」
チャタラから聴いた、というか、なんとかききだした話を、妹にした。
昔、黒騎士に使役されていた巨大なチャタラが、一時期封印され、戻ってきた。その出来事は、チャタラの間に伝承されている。
「俺は、そのチャタラがすぐに戻れたのは、使役してた黒騎士が体力と魔力を譲渡し続けたからやないかと思ってる」
「ああ、封印解除までって云う、カウンタ……」
「そう」
妹には、例の動きが不規則なカウンタについても話していた。あれは、体力と魔力の多寡で動きがかわるらしい、という仮説も話している。
巨大チャタラは、マルジャン達に拠れば、すぐに戻ってきた。封印された先がこちらの世界だったのか、それとも別の世界だったのか、俺にはわからない。だが、どちらにしても、黒騎士が体力と魔力を譲ったのは間違いないと思う。
「でも……それじゃあ、お兄ちゃんも魔力とか体力が充実してたら、封印がすぐに解けるってことじゃないの」
「確定じゃないんだ。だって、戻れたチャタラは使役されてた」
「それはわかってるってば。だから、黒騎士から体力と魔力を……あ」
妹も気付いたらしい。目をぱちぱちさせている。
俺は頷いて、云った。
「そうなんや。チャタラが戻れたのは、使役という関係で、あちらとのつながりが残っていたからかもしれない。命綱みたいに」




