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「絶対そう」
「どうしてそう思うの?」
睨まれた。
「どうしてって、そんなの考えんでもわかることやろ」妹はなじるように云う。「お兄ちゃんのこと本当に好きで、大好きで、先生とかお兄さんにも反抗してるんよ。友達に協力してもらって、お兄ちゃんとこっそりデートして、そういうのを喜んでたんで。お兄ちゃんの為にいろんなことがまんして……お兄ちゃんが悪しき魂やったくらいで、気持ちがかわる訳ないやんか」
「そうかな」
妹は俺の手をペちんと叩いた。
「なに、云うちょるん。封印したのだって、だからやん。だって悪しき魂やったら、殺すのが普通なんやろ。お兄ちゃんがそういったやんか。悪しき魂はなにも悪いことしてなくても殺される、そういうもんやって。それを、封印したんで? どうして殺さんで、封印したん?」
「え……わからん」
「わからんことないやん。お兄ちゃんのこと好きで、殺せなくて、だから封印したんよ。きっとそう」
それは……。
単に、俺の「魔」が強すぎて、倒せないと判断した、という可能性もある。それに、俺が魔につかれていることは、ほーじくんにしかわからない。だから、あの場で俺を攻撃したら、リッターくんなりジーナちゃんなりが応戦してくるかもしれないと、そんなふうに思ったのかも。
実際、ほーじくんが俺を攻撃していたら、そういったことは起こったと思う。リッターくんやジーナちゃんがほーじくんを酷く傷付けることはないだろうが、少なくとも、俺からほーじくんをひきはなしただろう。その一瞬で、俺が逃げる可能性を、ほーじくんは危惧していたんじゃないだろうか。
ほーじくんは祇畏士だから、悪しき魂については深く勉強しているだろうし、なら魔王や黒騎士が魔物を使役できることだって知っている。それが応援に来ることだって考えられる。
もし俺が逃げないとしても、事情を説明してみんなに負担をかけるより、自分ひとりですべてを背負おうと、そう考えたのかもしれない。
でも、妹の仮説は魅力的だった。
そんなふうに考えたいと思ってしまった。ほーじくんが、心情的に俺を殺せなくて、殺したくなくて、だから仕方なく封印したんだと。
妹は顔をゆがめ、しゃくりあげた。はなみずがたれている。「ああ、可哀相やわ、その子一生、お兄ちゃんを封印したこと悔やむやろうな。今だって泣いてるかもしれんやん。なあ、どうにかしてあげられんの、お兄ちゃん? お兄ちゃんが戻って、その子を安心させてあげんといけんわ。怒ってないよって、ほーじくんは悪くないよって、そう云うてあげんと。なあ、どうにかして戻れんの? お兄ちゃん……」
懇願するように云って、妹はむせび泣いた。




