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俺は息を吐き、吸う。「善なる魂を持った祇畏士には、そういうものを関知するひとも居る。それがどういう感覚なんかはよくわからんけど、とにかくなんとなくわかる」
「シイシっていうのは、さっき云ってた、お兄ちゃんが魔法をつかったら来てたっていうひと達やな? 理屈とか原理はわからんけど、ともかく関知されることがあるっちことやろ?」
「ああ」
妹は俺のわかりにくい話をきちんと理解しているようだ。聡明な妹でよかった。聡明すぎて、生きるのがつらいのかもしれないけれど。
「それで、祇畏士のなかには、そういう悪いものを封印できる力を持ったひとが、たまに居る」
「……封印」
「悪しき者、魔につかれた者を、文字通り封印する」
妹の眉がゆっくり寄っていった。俺ははっきりとした発音を心がけて云う。
「そういう魔法。もしくは、特殊能力。はっきりしたことはわからない。秘匿されてるから。ただその封印は、戦っても倒せないような、強い魔物や、戦ったら被害が大きすぎると判断した場合なんかに、苦肉の策でつかうらしい。封印しておけば魔物は弱まるから、封印が解けても以前よりは戦うのが楽になる。それに、封印が解ける前に祇畏士が死んでしまったら、封印が完全に解けなくなることもある。やから、あっちのひと達にとっては最後の手段みたいなんや」
ああそうか、と、喋っていて気付いた。
そうだ。封印は、祇畏士が死んでしまえば完全になる、それがあちらの世界での常識だ。その認識が半分間違っていると、ユラちゃんが突き止めたけれど、彼女の論文はまだ完成していなかった。だから、一般どころか研究者でさえ知らないかもしれない。そもそも魔に関する研究なんてしているひとが少ない。
そして、封印そのものの研究も、しているひとは少ない。
あまりにも強く、そして神さまの存在を強く感じさせる魔法だからだ。神さまの領域のことを嗅ぎまわるなんて、ユラちゃんくらい勇気がないと、簡単にできることではない。
そんななかで、俺が封印されたら、誰かがほーじくんを殺そうとするかもしれない。ほーじくんを殺すことで、封印を完全なものにしようとして。
それは、ユラちゃんに読ませてもらった、封印や魔に関する資料で、実際に書かれていたことだ。祇畏士が強大な魔物を封印し、その後殺され、その結果封印が解けて大きな被害が出た。その所為で、殺された祇畏士はまともなお葬式もしてもらえなかった……。
ミューくん達六人はきっと、ほーじくんの命をまもる為に、俺が封印されたことを隠してくれているんだ。




