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俺がチャタラを殺したことについては、魔法だと云うと、不審そうな顔だけれど納得したらしい。妹は口をとがらせ、低声で云う。
「強い魔法があるのに、その、異世界では、戦わなかったの。色々、大変だったみたいやのに。さらわれたりしたんやろ」
「俺が鈍いのわかってるだろお前」
溜め息を吐いた。おじさんには話さないですんだが、妹には魔法を見せてしまっている。それに、これ以上妹に隠しごとをして、負担を与えたくない。
ほかのことなら黙っていてもゆるしてくれるのに、どうやら異世界関係についてはある程度真実を明かさないと納得しないらしい。
兄妹なのだ。妹の気持ちくらい、少しはわかる。
「俺がつかえる魔法、あっちでは悪いものだってことになってるんだ。だから、人前でつかわないほうが安全だと思って、つかってこなかった。それに、ほんとに鈍いから、とっさのことには対応できない」
「わるいもんって? どういうこと?」
「冒瀆魔法って云う。神への冒瀆だから、らしい」
妹はかじりかけのおまんじゅうを持った手を、ローテーブルへのせる。
「それじゃあ危険じゃないの? 天罰とか、あるんやろ」
「いや」頭を振る。「そういうふうにみんな云うし、本にも書いてあるけど、俺は天罰をくらったことはない。正確には、俺が原因の天罰はない。一度もなかった。それは確実」
山道掃除の時に天罰はあったが、あれは裁定者が質問をして、じゅうたんと椅子が原因だとはっきりしている。俺は関係がなかった。それは間違いない。
それに、俺が原因の天罰がレント以外で起こったということも考えにくい。
もし天罰と覚しい事象があったら、その土地の裁定者が質問する筈だからだ。質問を重ねれば、いつかは原因に辿りつく。俺が原因なら、「レントに居る國立真緒が原因」と出る。そうなれば、傭兵協会なり御山なりからなにか云われる。
「魔法をつかったことも何度かあるけど、それでなにかあったりはしてない」
祇畏士や善なる魂持ちのひとが、たまに来ていたが、だからってそのひと達から危害を加えられたり、悪しき魂だと看破されることはなかった。ほとんどのパターン、近くに居るニーバグを感じとったのだと勘違いしてくれていたな。
妹は心配げに云う。
「魔法、つかったって、魔物と戦ったん?」
「いや、草むしりとか、ピーナツバターつくる時に崩潰っていう魔法でつぶしたりしてた。家事に便利やったから、ようつかってたんや」
妹の目がまんまるになった。それから笑うような声で云われる。「お兄ちゃんやね」
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