表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3475/6870

3335


「お兄ちゃん、前髪に寝癖ついてる」

「いいよ別に」

 そんなもの気にするひとなんて居ない。

 俺と妹は並んで、旅館のお庭を歩いていた。妹とふたりなら大丈夫だと判断されたみたいで、俺と妹が揃って出て行っても誰もなにも云わなかったのだ。

 もしかしたら俺は、逃走するかも、とでも疑われていたのかもしれないな。妹ならここでもなにかしら仕事をしていて、フロントも顔見知りらしかったし、旅館的には安心できる人間だ。

「いいお部屋とれた?」

「あ」

「忘れてたん」

 呆れたような声に、頷きを返した。妹は肩を震わせて笑う。ふくらはぎ丈の、生成りのワンピースの裾が、ふわふわ揺れた。これくらいの丈でも、ジーナちゃんははずかしがっていやがるだろう。はしたない、と。

 ジーナちゃんは、大丈夫かな。ミューくんの癒しの力のことは、彼女には負担になっているかもしれない。それでも、ミューくんを助けよう、まもろう、と、心を砕くのがジーナちゃんだけれど。

 ミューくんは、みんなにも話すかもしれない。ユラちゃんならなにか方策を見付けてくれるかもしれないし、それにサキくんは、色々云っていたけれど、ミューくんのことを凄く大切に考えていた。ミューくんが傷付かないように、手を尽くしてくれるだろう。

 リオちゃんやリッターくんだって、友情に篤いから、ミューくんが困っているのなら助けようと思うに違いない。

 そう。

 ほーじくんだって、ミューくんを、それにみんなを、友達だと思ってる。きっと。だから、ミューくんを助けているだろう。俺が居なくたって、ほーじくんは平気だ。

 平気な筈だ。

「それやったら、なあ、同じお部屋にしようえ」妹は笑いながら振り向いて、表情を凍りつかせた。「お兄ちゃん?」

「うん?」

 妹が立ち停まる。だから俺も停まった。

 そっと、腕を掴まれる。「なんかあったん? どうして、そんな、かなしそうな……」

 妹の目に涙がたまっていくのを俺は見ていた。


 お庭には休憩できるように、ベンチがある。俺は涙ぐむ妹を宥めて、そこまで歩かせた。こんな時に妹を担げるくらいの腕力がないのがもどかしいし、ふがいない。妹は痩せているから、並みの男なら抱え上げたってなんでもないだろうに、俺にはその力がない。

 妹をベンチに座らせて、自分もその隣へ腰掛けた。

 かかとを地面につける。妹も似たような格好をしていた。兄妹だなあと思う。「なんでもないから。気にしないで」

「嘘や。お兄ちゃんあんな顔せんもん」

 妹は洟をすする。「どうして隠すの?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
― 新着の感想 ―
[良い点] 優しい妹さん(*´꒳`*) [気になる点] ミュー君たちあちらの子らの心身の健康がホントに心配… [一言] 次あちらの世界に行くときはボタンいっぱいの服で( ゜ω^ )
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ