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ウェイターさんがさーっと、加勢に行った。手にレストランのパンフレットを持っている。
役付のひとがにこやかにウェイターさんにお礼を云い、パンフレットをひろげた。一点を指さす。「こちらにも書いてございます」
四人組の口が更に開いた。事実、注意書きがあったのだろう。なら、それを見落としたほうが悪い。実際、出入り口付近に、結構大きな文字で書いてあったしな。料理を撮影することのない俺でもぱっと目についたくらいだ。
役付のひとはあくまでにこやかだ。
「許可を得ずに撮られた写真は、すべて消去して戴きます。それが当レストランの方針ですので」
「ちょっと……」茶髪女性がいきりたった。「写真くらいいいでしょ。それを消せなんて、横暴じゃないの」
「決まりですので」
「そんなの知らない。見えもしなかった。ねえ消さないでしょ?」
女性は、俺の写真を撮ったと覚しい男性に、強い調子で云う。男性は気が弱いのか、女性と役付のひととを交互に見る。
役付のひとがやわらかく云う。
「もし、こちらの許可を得ずに撮影した写真を、SNSなどに掲載された場合、法的な手段を執らせて戴くこともございます」
「なによそれ、脅しじゃない。この店はお客を脅す訳?」
「滅相もない」役付のひとはにっこりした。「これは警告でございます」
四人が言葉を失った。
女性は気が強く、なおも云い返そうとしたらしく息を吸い込む。
が、少し離れた位置にあるテーブルの、高校生くらいの女性グループのひとり、銀髪に緑メッシュの子が、ケータイを振るように動かして云った。
「ちょっとオネーサン、うるさいんだけど。うちら、今動画撮ってんの。オネーサンの声が料理の紹介にかぶってんだけど」
「は?」
茶髪の女性が立ち上がった。「あんた達には関係ないでしょ!」
「関係あんだよ」
「ていうか、だからうるせーっていってんだけど」
「うちら自分に関係ないことに口出さないし」
「あったかいの食べたいのにさあ、説明とれないからご飯さめちゃうじゃん」
「ちょっと!」茶髪女性が役付のひとにくってかかった。「あの子達はいいわけ?」
「うちらはちゃんと許可どりしてますぅー」
銀髪の子の向かいに座っている、眼鏡でプラチナブロンドのみつあみの子が、ばかにしたように笑いながら返した。あのグループ、頭の色が凄いし、お化粧も服装も派手だ。バイタリティを感じる。「ねーみっちゃん。そうだよねえー」
「うん。ほら、これ。支配人さんにちゃんと許可とって、編集後の動画チェックするって約束でネットにアップするのもおっけーってことになってます」




