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俺が食事を中断して、それなりに強く、勝手に写真を撮ったひとを睨んでいるからか、ウェイターさんがやってきた。軽く腰をかがめ、気遣わしげに訊いてくる。
「お客さま、どうかなさいましたか?」
「いえ」
どうかしたのはしたのだが、抗議しようにも「撮っていない」と云われたらそれまでだ。もめてまた余計な記事になったら面倒くさい。勿論、さっき頭をよぎった、偸利などの冒瀆魔法で憂さを晴らすというのも、危険すぎてできない。
だから、俺はむっとしたまま、軽く頭を振った。ああいう手合いは相手をするだけ無駄だ。無視しよう。それが多分正しい。
「なんでもありません。あ、ゆずこしょうもらえます?」
「ええ……かしこまりました」
ウェイターさんは、にこっとした。なんでもないと云ったが、俺を見てなにかを察してくれたらしい。俺が睨んでいたテーブルをちらっと見て、寸の間考え込む。それから失礼しますと云い、レジカウンタへ歩いていって、カウンタの奥に居るひとと話していた。
あれは多分、役職のあるひとだな。ここの制服は俺が働いていたところとは違うから、確実ではないけれど、制服の襟に赤っぽいピンを刺している。花をかたどっているように見えるピンだ。制服に違いがあるのだから、役職も違う筈だ。
ふたりはしばらく話していた。それから、小さながらすの器を持ったウェイターさんが戻ってくる。「どうぞ、ゆずこしょうでございます」
「ありがとうございます」
わ、ゆずこしょうたっぷりだ!
テーブルに置かれたがらすの器は、開いた夕顔のような形をしている。そのなかには淡い緑のゆずこしょうがたっぷりはいっていて、小さな木のお匙が添えられていた。このお匙、小さくって可愛い。器も綺麗だ。これらはおじさんが買い付けてきたんだろう。おじさんは綺麗なものが好きなのだ。それもあって、トレジャーハントなんてしているのである。
レモンこしょう、どうなっただろう。
ふいっと、ラスターラ家のひと達のことを思い出した。みんな、元気にしているだろうか。ほーじくんの宣言も、ラスターラ卿が立ち会ったんだったよな。俺が封印されたことで、ラスターラ卿の立場が悪くなっていないといいけれど……俺、色々口出ししちゃったからなあ、ワインのことも、レモンのことも。
考えながら、ちゃぼむしにゆずこしょうをのせた。とり肉とゆずこしょうって合うよねえ。俺はとりの水炊きにはゆずこしょう派だ。ラスターラ家のレモンこしょうも、合うかも。でもあれって、バターとまぜたのが最高だよな、むしどりには。




