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 気付くと、とても不快になった。

 あちらでは職業と特殊能力の所為で怯え、こちらでは自分の顔が知られている所為で怯える。なんだか、どちらの世界でも、たいした差がないように思える。

 勿論、こちらでは髪は短くても普通、というか男なら髪は短いほうが普通だし、アクセサリをごちゃごちゃつけているほうが奇異な目で見られる。悪しき魂だ! とか、魔王だ! この世へ害をなす者だ! なんて糾弾されて殺されることもなければ、当然、封印されるおそれもない。その点は安心できる。

 だが、よくよく考えれば、俺は例の記事が出て以降、安全ではなかった。完全に安心したことなんかなかったじゃないか。

 夜道でつけまわされて家までおしかけられたり、腕を掴まれてどこかへひきずりこまれそうになったり、口に出せないような文言の並んだメールを送りつけられたり、それなりに危ない目にあっていたのだ。ずっとびくびくしていた。

 それならあちらとそんなに違いはないと、理解した。

 俺が殺された場合に、悪しき魂だから仕方ないよね、魔王だもん世界の為に殺さなきゃね、となるのがあちらの世界で、なんかスキャンダルあったし仕方ないよね、いじめとかしてたらしいもんね、となるのがこちらの世界だ。

 そのあと家族への取材攻勢がはじまるだろうから、こちらの世界のほうがより酷いとも云える。


 裁判はこちらの言い分が通って終わったし、もう煩わされることはないだろうと思っていたのに、まだこんな目にあわないといけないのか。はあ、呆れるわ。

 俺の写真を撮っていたらしいひとを、じっと睨んだ。そのひとは俺から目を逸らして、落ち着かない様子で箸を動かしている。俺と同じくらいの年代の男のひとだ。同じテーブルの男女三人も、俺に気付いているみたいで、わざとらしく楽しそうに会話している。「これ食べたら、散策しない?」

「いいね……」

 落ちぶれたもと・子役の写真なんて、撮ってどうするんだろう。ひなびた旅館でひとりで食事していた、とでもネットにさらすんだろうか。誰かと来ているのでは、とか?

 写真を撮るんなら、許諾を得てからがマナーだ。一時期芸能活動をしていたからといって、いつでもどこでも好きなように写真を撮っていいなんてことはない。撮っていいですかと訊かれれば俺だってそれなりの対応はする。高確率で断るけど。

 それとも、まだ追っかけてきているのかな、雑誌社のひととか、自称・記者とかが。だとしたら面倒すぎる。

 こちらのひと達って、魔力ないのかな。偸利をつかったら、殺しちゃうだろうな。


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こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
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