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おじさんはすたすたと、扉へ歩いていく。俺はアクセサリを収納空間へ落とし、しまいそびれたものがないか確認してから、収納空間の口をしっかり閉じた。おじさんがここまで云うのなら、今日中に結論が出るのは間違いない。約束を破るひとではない。だから、おじさんが結論を出すのを、俺は待つしかない。
おじさんが支配人室を出て行った。俺はさっと、おじさんを追う。収納空間が完全に閉じているのを、一度振り返って確認した。こちらでは、収納空間の閉じ忘れは、大きな騒動に発展する可能性がある。なんでも吸い込む謎空間、みたいに騒ぎになったら、大事である。
ああ、収納空間閉じ忘れが騒動になるのは、あちらでもかわらないか。収納空間を開いて、そこから距離をとればとる程、疲れるものらしい。それでいろんなひとを困惑させてきている。
俺は苦笑いして、おじさんに続いて支配人室を出た。
廊下には、支配人と、白石くんが居た。支配人は、おじさんが出てきたので、ほっとした様子で息を吐く。「オーナー、あと十五分です」
「わかっちょる。すぐ行く。十五分あったら充分じゃろう」
「移動が……」
「走りゃいい」
おじさんは簡単に云い、支配人は苦笑する。おじさんにふりまわされていないかなと思ったけれど、関係は良好らしいので安心する。おじさんはいいひとだが、バイタリティがありすぎてまわりが疲れることが多々あるのだ。だが、支配人は、おじさんについていける人材らしい。いいひとが居てよかったなあ。
白石くんは完全に、もとの業務へ戻る機を逸したらしく、不安げな顔で支配人の斜め後ろに立っていた。きょときょとと目が泳いでいて、支配人に指示してもらいたそうだが、支配人は手帳を開いて、おじさんとスケジュールの確認をしている。「最初はこちらから」
「おう。右回りじゃな。ああ、アスパラはどうなったんかのう」
「順調だそうでございますよ」
支配人はにこにこし、おじさんも笑顔になる。
一応、全従業員がイヤホンをつけていて、そこに指示が這入るようにはなっているのだが、白石くんには呼び出しがないのだろう。不安そうに目を泳がせる以外は、じっとしている。
フロントのふたりは、俺がおじさんとどんな話をするか知らないし、俺がいつどのタイミングで帰るかも知らない。だから、安易に白石くんを呼び戻せないのだと思う。俺が、玄関までの道がわからない! と怒る可能性もあるのだし、道案内を置いておいて損はないという判断だ。
「じゃあ真緒、あとでの」
「うん」




