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おじさんは目をまんまるにしている。まあな。
鼻で笑ってお仕舞、の可能性もあると思ってたから、とりあえず最後まで話を聴いてくれただけでもありがたい。おじさんは俺と同じで、好奇心に踊らされるタイプだ。奇妙な話でも、最後まで聴かずにいられない。それもあって、おじさんにこうやって事情を打ち明けているのだが。
おじさんはさめたお茶で口をしめらすみたいにすると、もごもごと云う。
「真緒、それは、本当なんか」
「本当だよ」
即答した。それから、ローテーブルをなぞる。
おじさんがびくっとした。ローテーブルには、がらすのひび割れのようなものができている。収納空間の口だ。おじさんは俺の説明を、かなり真剣に聴いてくれていたらしい。激しく瞬きしながら云う。
「それが……収納空間か」
俺は軽く肩をすくめた。「そう。それで、これが証拠」
収納空間へ手をいれて、アクセサリを掴みとり、ローテーブルへ置く。突然あらわれたきらきらに、おじさんはちょっと身を引いた。
ノックの音がした。アクセサリを見詰めていたおじさんは、はっと振り返る。「なんか?」
扉の向こうからくぐもった声がした。おそらくおじさんの対戦相手だ。「オーナー、ファームの責任者と会う時間です」
「あ、ああ……真緒」
おじさんはこちらを見て、アクセサリを指さす。低声で云う。「それは、しまえ。今からファームに行かなならん。先にめしくうて、温泉はいれ」
成程、それで今日、こちらに来ていたのか。
この宿の傍に、有機農法の農園を、おじさんは持っている。そういえば、今年(ややこしいが、こちらの世界での今年だ)の初め頃、おじさんが農園をひろげたと聴いた。ぶどう園をつくる話も出ているらしいし、もしかしたらその相談があったのかも。だとしたら、俺は忙しい時に厄介なことを持ち込んだ訳だ。
おじさんはトレジャーハントの才能は致命的にないのだが、商売は得意らしくて、事業は拡大を続けている。ジュエリーの話は妹から聴いて初めて知ったけれど、よく考えればそもそも光りものが好きなおじさんが今まで手を出さなかったのが不思議な分野である。どの宿も軌道にのっているので、満を持して自分の好きなジャンルへ進出した、ということだろう。
俺はつい、念を押そうとした。
「おじさん、今の話」
「誰にも云わん」おじさんは立ち上がりながら、鋭く返してくる。「約束はまもる。じゃけど、考えたい。今日中には考えをまとめるけん、お前はゆっくりしちょけ。レストランで好きなもんくうていいぞ」




