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おじさんはしばらくかたまっていた。俺は喋らない。
「真緒」
「うん」
「……座れ」
「うん」
頷いて、おじさんが示したところへ座る。おじさんの向かいだ。おじさんも、再び腰を下ろす。またしてもしばらくの沈黙があって、おじさんは云う。
「これは……どこで買うた?」
「喋るけど、おじさんが信じるかどうかは俺は責任持てないよ」釘を刺した、「あと、絶対にないしょね」
おじさんは奇妙なものを見るような目を向けてくる。俺はもう一度、肩をすくめる。こればかりは、黙っていると約束してもらわないことには喋れない。
おじさんは結局、頷いた。
「わかった。お前がそこまで云うんなら、俺は出所については一切喋らん」
「ありがとう」
俺はほっとして、息を吐く。
「俺、ここの世界とは別の世界に行ってきたんだ」
インドで買ってきた、とか、そういうのはぼろが出る。だって行ってないもなん。どこで買った? とか、誰から買った? とか、鑑定書は? とか聴かれたらお仕舞だ。大体、俺がインドに行ったら買うのは、多分スパイスである。主にヒン。
かといって、国内で簡単に買える量でもなければ、これだけのものを買うお金は俺にはないらしい。こっちでの宝石の相場がわからないので、らしいとしかいえないけれど。
ただ、妹の云うことは大概正しいので、俺が持っているアクセサリが高いものだというのは真実なのだろう。だから、このままだと強盗や窃盗を疑われかねない。丁度怪しいことに、しばらく「旅行」で姿を消していたしな。なので、正直に話そうと思った。
俺はおじさんに、ざっくりとことの経緯を話した。
本当にざっくりだ。俺が魔王だとか、あちらでは魔王というのは見付かり次第殺されるような存在だとか、そういうことは云わない。心配されそう、というよりは、混乱させそうだから。
気付いたら異世界に居て、収納空間含む有用なスキルを幾つか持っていた。だが異世界はわからないことだらけで、モンスターも居るし、さまざまな危険がある。
そういう情況で、俺はそちらでいろんなひとに助けられながら、なんとか生きていた。宿で働いたり、大学(御山は大学もしくは大学院みたいなものだから、そういう表現にした)で雑用をしたり、安全に楽しくすごした。
二年くらいたって、ひょんなことで戻ってきたが、こちらでは何日もたっていなくて驚いた。その上、時間がたてばまた、異世界に行く可能性がある。
「だから、異世界に持っていきたいものを、買っておきたいんだ。その為にお金が要る」




