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サキくんが還元でつくった宝石も、収納した。ただ、うずらのたまごみたいなのだけはそのままだ。しばらく掌で転がして、眺める。これ、どこかで加工してもらえないかな。銀鎖のペンダントにでも。それとも、ブローチとか、いいかもしれない。
チャタラの状態異常をひきとって、どこかへ隠れておくようにと追い出した。二匹は軽いあしどりで居なくなる。こころなし、ジャンプが普通よりも高い気がするんだけど。
「さあ、交渉だ」
自分に気合いをいれて、ケータイをとりだした。こんな時に頼れるのは誰かと云えば、勿論おじさんだ。
三十分後、俺は最寄り駅から電車にのって、立ったままがたごとと揺られていた。妹からメッセージがはいっていて、どうやら裁判はいい結果に終わったらしいと知る。妹は、今日も実家ですごすそうだ。
ちょっと気になってネットニュースを見てみると、俺に関する記事が二本だけあった。もと・子役のKさんを誹謗中傷したとして、雑誌社に賠償命令。こういう時だけ名前が伏せられてしまい、中傷記事はがっつり書かれているのだから、意味があるのかないのかわからない。
どちらにしても、こうなった以上は、もう俺に関する記事もなかなか出ないだろう。虎の尾を踏みにいくあほは少ない。
訴訟を起こされて賠償命令が出ても、その前に賠償金をうわまわるお金を儲けられるのなら話は別だろうが、そもそもとうのたったもと・子役、それもたいして人気でもなかったやつの話題で、そこまで儲けられる訳もない。
「あの」
「はい」
ケータイから目を逸らした。大きなバックパックを背負った小学生くらいの男の子ふたり組が、目をまんまるにして俺を見上げている。
ケータイをポケットへ戻した。ちょっと腰をかがめる。「なにか用ですか?」
「あ」
「あのー、マオちゃんですよね」
これくらいの年代の子が知ってるもんか?
と思ったが、コマちゃんは俺のファンだった。そういえば夏休みだから、悪霊小学校が放送される時期だ。悪霊小学校は何作もあるので、放送されるのがどれかはまちまちだが、俺が出ていたものが放送されてもおかしくはない。
片方の子がちらっと背後を見た。そちらへ目をやると、その子によく似た顔立ちの、三十代くらいの女性が座っていて、俺にぺこっと頭を下げる。その近くの席に居る、高校生くらいの女の子もそうした。
目を戻す。男の子ふたりはあまり似ていないし、服装の印象もばらばらなので、お友達、かな。夏休みだし、友達同士で、家族と遠出しているのだろう。
俺はにこっと笑った。「うん。マオちゃんだよ。悪霊小学校見てくれた?」
ふたりはぱっと顔をかがやかせた。
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