3316
すでにアクセサリーになっているものを綺麗にしたら、次は単なる宝石だ。単なる宝石って云いかたもどうかと思うが。
まずは、アロさんが俺の収納空間にたたきこんだ、宝石製のペンだ。これくらいでも、切り分ければピアスにできそうだし、売れるんじゃないかな。
次は、アクセサリ屋さんで買った、おもりにつかわれていたくず宝石。くずと云ったって、俺にはまったくくずに見えない、れっきとした宝石である。そちらも度々買っていたので、量は相当だった。
四月の雨亭で、受験生へアクセサリを持って帰ってもらえるようにしてたから、ディスプレイ用に沢山持っているのだ。場所をとるという理由で、必要な時だけ俺が呼ばれて、センスがいいもと・娼妓達の指示どおりの色のものを出したりしていた。たいした金額でもないし、ということで、経費として計上はせず、俺が勝手に買って勝手にディスプレイに利用していたのである。
というかそもそも、買ったものの収納空間にほったらかしていたくず宝石の使い途をどうにかひねりだした、という感じ。
それらを綺麗にし、最後はサキくんからもらった宝石を出した。
うずらのたまごくらいの琥珀をつまみあげる。
「サキくん、元気かな」
掌で転がし、偸利で綺麗にする。「リッターくんと、どうなったかな……」
サキくんからもらった宝石は沢山ある。俺は床にべたんと座り込んで、それを眺めていた。きらきらしているものを見ていると、なんとなくしあわせだ。
宝石は偸利で全部綺麗にした。でも、仕舞いこまずに、触る。そうしていると、サキくんとの会話がよみがえってくる。サキくんは傷付いていて、それなのに自分のことは二の次で、まわりに気を遣っていた。もっとわがままになればいいのになっていつも思っていた。
サキくんの髪の、しっかりした手触りが、ふっと思い出された。その髪を梳いて、なんでもないお喋りをして、いつもと違うよつあみにした。あの朝はなんだか、穏やかで、夢みたいだった。
それがきっかけで、奉公人の試験や、それをセロベルさんやバルドさん達が応援してくれたこと、ランスさんやサフェくんと知り合ったこと、メイリィさんとワウラさんとディロさんのこと、ロイネちゃんのこと、みんなが沢山餞別をくれて、笑顔で送り出してくれたこと、西の二の門の前でルクトくん達と顔を合わせたこと、そういう諸々が思いうかぶ。
そういうものを得ることができたのだから、俺はそれだけで満足すべきだったんだろう。




