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学芸員さんが案内してくれるそうで、俺達は招集をかけられ、集まった。そういう案内がいらないひとは自由に見てもいいと云われたものの、俺は美術とか芸術とか、とにかくそういうものはわからないので、素直に案内してもらう。家族も同じで、集団から離れようとはしなかった。
最初はやっぱり、ロビーに飾ってあるじゅうたんやタペストリー、どこかの先住民が織ったブランケットなどから。なんだかどれも凄いものみたいだ。感覚が麻痺しているな。じゅうたんを織るのって、凄く時間がかかるのだそうだ。交織士さん達が凄かったのだとよくわかった。
学芸員さんは質問をうけつけていて、誰かが質問したのだが、この場所にあるものはどれも何千万という値らしい。
「今は同じようなものはつくられていないんですか?」
「つくられていますが、模様も材質も年代によって変化します。古いもののほうが、学術的な価値はどうしても高くなりますね。あまり古くないものでも、このくらいのサイズなら、百万円くらいはするかな」
ひええ。俺、ござがわりにしてたぜ。厚みがあって、寝っ転がると気持ちいいんだよな。タペストリーもランチョンマットがわりにしてた。
タペストリーも高いそうだが、一番高いのはブランケットだった。六千万円だって。うへえ。
場所を移した。そこに飾ってあるのは、古い食器だと思う。多分。あんまり、解説の内容が頭にはいらない。
俺は妹に一言云って、集団を離れ、トイレへ向かった。マルジャンが心配だったからだ。状態異常をひきとった。結局、マルジャンにはこちらの空気が毒、ってことだろう。また吐きそうになって、苦しかった。
開拓者が化学薬品とか、排気ガスとか、そういうものへの耐性を生きものから奪った、ってこともありうるよな。魔法の力を人間に授け、還元もできるようにした神さまだ。なにかを引き金に体調を崩したり、なにかは絶対にできないようにされているかもしれない。
そうだよ、西の一の門に手をいれようとしたら死ぬって云うのだって、そういうプログラムを組み込んでおけばいい。特定の行動をしたら確実に死ぬ仕様に。
ああ、実存者だ。
実存者が、存在そのものが不安定になっていたひと達を安定させたみたいなことが、神話に書いてあった。その件を読んで、プログラムし直すみたいな感じかな、と思った記憶がある。
だから、存在自体に干渉できる神さまも居るし、そういう実例がある。開拓者が、化学薬品に対する強烈な拒絶反応を起こすように、もしくはそういうものを体内で分解できないように動物をつくりかえることは、不可能じゃない筈。開拓者がつくった(正確には整えた)世界だから、開拓者がなにもかもを好きなようにつくりかえていても変じゃない。
開拓者の意図はわからないけれど、マルジャンがただそこに居るだけで体調が悪くなるのは事実だからな。別の世界である以上、どういう仕組みか、わからないし。
感想ありがとうございます。はげみになります。




