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あのお店の店員さん達には申し訳ないが、チャタラはどうにかして隠さないといけない。あいつの存在が発覚したら、相当面倒なことが起こりそうだからだ。あちらの世界のことまで露見するかもしれない。
それはなんとなくいやだ。
ローテーブルにあちらで買ったお菓子類を置き、紙に大きく「お土産」と書いてその傍にテープではった。妹にタオルケットをかけて、きちんと施錠し、アパートを離れる。妹が食べてしまっても、収納空間にはまだ在庫はある。
砂場がなくなってから、公園は子どもの人気を失った。そもそも、「すぐ隣の林で昔殺人事件があって、その痕跡を隠す為に伐採が行われない」と云われていて、砂場目当てだった子達は少し離れた、明るい雰囲気の児童公園へ行くようになったらしい。大家さん情報だ。俺達の話題は、あたりさわりのない地域ニュースがほとんどだった。
昨日も、子どもが居ておかしくない時間なのに居なかったし、人気がないのは本当らしい。今日も、誰も居ない。出入り口傍の木の下に、犬の糞が散乱していて、こういうのも子どもを遠ざけるんだろうなあと思った。
俺は公園に這入り、奥まったところにある林へ向かう。殺人事件というのはまったく事実無根で、林が放置されているのは私有地だったかららしい。今年にはいって行政の管理下に置かれたのだけれど、費用の問題から手をつかねているとのことだった。
こういうのも不法侵入になるんだろうが、注意喚起の看板もみちきり縄的なものもなかったので、俺は林に這入りこんだ。ここくらいしか、ぱっと思い付く「人目につかないところ」がなかったのだ。
「チャタラ、おいで」
試しにそう云ってみる。使役は、どんな情況でも、使役している生きものを呼び出せる筈だ。使役されている生きものはそれに逆らわない。そういうものだと、説明に書いてあった。
移動に時間がかかるだろうからのんびり待とう、と思っていたのに、チャタラはすぐにあらわれた。ほんとにすぐにだ。走ってやってきたとか、そういうあらわれかたではない。目の前にしゅっと出てきた。
予想外だったので、俺は大きくかたあしをさげる。ひえっと云ってしまった。チャタラはおとなしく頭(多分)を下げ、なにもしないよ、とでもいいたげにしている。
えーと。
こいつは、喋れないタイプかな。それとも、喋れるけど、喋らないようにしているんだろうか。
わからないので、云ってみる。「喋れるなら、喋ってくれるかな」
チャタラは、しゅるしゅる、みたいに鳴いた。成程、俺の云っていることは理解しているが、こいつは喋れないみたいだ。




